「ブレイキング・バッド」ーーいつの世も悪銭身につかず

 肺がんで余命わずかと告知された高校の化学教師が自分の知識を活用して手っ取り早く大金を稼いで家族に財産を残そうと選んだ道は麻薬づくりだったという米国の大ヒット・ドラマシリーズ。

 評判になるだけあって面白かった。すぐに大金が儲かる仕事ではあったものの、想定外の出来事の連続に、カネが出ていくのもあっと言う間。危険を冒し、知恵と努力の末に(知恵と努力の方向は間違っているけど)爆発的に稼いだはずなのに、自分の手元にはたまっていかない。メキシコのカルテルという怖い存在もある。どうなるかと思いながら、第6シーズンまで全部見てしまった。

 その結論は、というと、悪銭身につかず、という古くからの教え。犯罪を秘密のうちに保ち、対抗勢力から身を守るにはコストがかかる。加えて、使えば使ったで、税務当局、捜査当局に目を付けられるし、マネーロンダリングも大変。裏で稼いだカネを表で使えるようにするのも並大抵のことではない。悪銭身につかず、ということを教えてくれる(最後はたまったといえば、たまったともいえるけど)。

 表ではファーストフード店を営み、裏では麻薬ネットワークの顔役である紳士風の冷酷なボス、何でも処理してくれる仕事人、そして、裏社会に長けた調子のいい弁護士と周辺のキャラクターが書き込まれていることが物語をさらに面白くしている。