「ゲット・アウト」ーー現代のアメリカで黒人が生きていく恐怖をスリラーで

 遅ればせながら、見ました。

  アカデミー脚本賞をとった評判のスリラー映画。評判とおり、怖くて、面白かった。白人女性の恋人の実家に行くことになった黒人青年。弟はちょっと変なものの、医師で知的な両親をはじめ、家族の友人、知人を含め白人の皆様はみんな歓待してくれるのだが、黒人をメイドや庭師にした、その家のムードはどこか、おかしい。その異様なムードが恐怖を呼ぶ。

 この映画を見ていると、表面的には平等でも、どこかで白人優位思想が残る社会で暮らす黒人の緊張感を体感できる。白人の犯罪者に襲われているときにパトカーが来ても、安心できない。警察が黒人を守ってくれるとは限らないから、パトカーがかえって緊張感を生む。

 米国では、ときには黒人に対する警官の人種差別的な暴行事件がよく話題になるが、この映画、そうした社会に暮らす黒人の緊張感をスリラーの形で体感させてくれる。ドキュメンタリータッチで真正面から声高に警官や白人優位社会の横暴を告発するよりも、どこかマンガ的な展開もあるスリラーの形式の、この映画のほうが、人種によって運命が変わる不条理な社会に暮らす黒人の緊張感を体感的に伝えてくれる。

 人種を超えた恋人をもつこと自体がリスクであり、ときに恐怖と緊張を生むのだなあ。自分の部屋にいるときはいいが、一歩、外へ出ると、一緒に車でハイウェーを走っているだけで、サスペンスが生まれる。そんなことを感じさせてくれる映画だった。

 この映画、ちょっと「マルコビッチの穴」的なところもあるのだが、催眠術を操る恋人の母親役でキャサリン・キーナーが出ていた。このあたりのキャスティング、意図的なのどうか、わからないが、面白い。

 もうひとつ、映画の本筋とは関係なく、気になったのは、主人公がつかっているパソコン。マイクロソフトSurfaceなのだ。主人公はカメラマンだから、アート系、クリエティブ系の常として、使うならば、MacBookiPadだと思うのだが、なぜか、Surface。これも主人公が黒人であることに関係があるのか。あるいは、単に、プロダクト・プレイスメントというか、スポンサーの関係なのか。意味があるのかないのか、わからないが、ちょっと気になった。

 

 それはともかく、久しぶりに怖くて、面白い映画でした。