ドラッカーが死去

経営学の父」と呼ばれ、20世紀の産業・社会に大きな影響を与えた米経営学ピーター・ドラッカー氏(95)が11日、米ロサンゼルス近郊のカリフォルニア州クレアモントの自宅で老衰のため死去した。同氏が教授を務めていたクレアモント大学大学院が発表した。葬儀の日程は未定。

「経済人」の終わり―全体主義はなぜ生まれたか ナチスの分析からインターネット時代まで、その本質を解説した人、それも半世紀以上を「知の最前線」でバリバリの現役で送ったというのは驚異的だ。何しろ、昔、ジョージ・オーウェルの評論集を読んでいて、ドラッカーの著書が賞賛されているのを発見したとき、経営論のドラッカーと同じ人物なのかどうか、頭が混乱してしまった。経営学者ともいえるが、それ以上に、社会学者、社会システム学者とでもいったほうがいいのではないかと思う。ともあれ、すごい人だった。
 著作で言えば、ナチスドイツを分析した(しかも、ヒトラーが生きている同時代に)「経済人の終わり」は大傑作だし、マネジメント論はどの本も参考になる。GMの分析はもちろん、非営利企業の研究まで、どれもドラッカーならではの分析・研究だ。日経に「私の履歴書」を連載していたが、個人的には(既に絶版になったのかもしれないが)ドラッカーが70歳の誕生日を前に書いた半生記「傍観者の時代」(ダイヤモンド社)が印象に残っている。第一次大戦後のヨーロッパの落日と米国に渡ってからの雑誌王国タイムの創業者、ヘンリー・ルースとの交流など、ドラッカーの知の形成を辿ることができる。いまは米国人だが、オーストリア生まれで、ドイツ、英国でキャリアを積み、本質的には欧州的知性の人だったように思える。合掌。