村山治「市場検察」

市場検察

市場検察

特捜検察vs.金融権力 バブル崩壊以降のグローバル化市場経済化が進む中で、検察の機能をめぐり、市場経済への対応を重視する法務省・改革派と、国民が求める(政治・官僚・産業)権力の犯罪の摘発に主眼を置く特捜検察・現場派が対立する。この本と同じ著者の「特捜検察vs金融権力」の続編とも言える。最終的に、従来の特捜部型検事は主流から外れ、改革派が検事総長の座を守り、主流派を形成し、司法制度改革を推進し、公正取引委員会や証券監視委員会と協力して、市場の犯罪の摘発に重点を置いていく。最近、話題の裁判員制度の導入を含め、現在の司法改革がどうして生まれてきたのかがわかる。それぞれに、それぞれの理由がある。特捜検察の現場の苛立ちもわかるし、従来の特捜的事件を素通りしても司法改革を優先させた法務省・改革派の気持ちもわかる。答のない問題だけに爽快な結論があるわけではなく、読後にも重いものが残る。これまでの捜査方法に限界があることも確かであり、何もかも新たなシステムが求められている。ただ、今、進んでいる制度改革だけで終わるのかどうかは微妙で、なお試行錯誤の段階にあり、なお、改善が必要とされるのだろう。