映画に登場した雑誌の世界 3題

 米国の映画には実名のまま、あるいは実際の雑誌がわかる形で、雑誌の取材・編集現場を舞台にした作品がある。その代表例を3つあげると・・・。まず、これ。

 米国の音楽雑誌「ローリング・ストーン」に取材を依頼された少年がグルーピーの少女に抱く初恋をロックの世界を舞台に描いたものだが、取材依頼から掲載に至るまでの厳しい記事チェックシステムまで、米国の雑誌はこうなっているのかと勉強になるところがある。このあたりがリアルなのは、それもそのはず、監督・脚本・製作のキャメロン・クロウ自身が「ローリング・ストーン」の記者だったから。この音楽を担当しているナンシー・ウィルソンはキャメロン・クロウ夫人だが、美人姉妹ロックバンド「ハート」のブロンド・ギターリストであったり、雑誌とロックの世界から生まれた映画。
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 で、この映画の「ローリング・ストーン」に見られる米国雑誌の記事チェックシステムはかなり緻密だと思うのだが、いくらシステムはあっても、基本的に編集は信頼関係で成り立っており、これを逆用されると、名門誌にも捏造記事が載ってしまうという実際の事件をもとにした映画がこちら。
ニュースの天才 [DVD]

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 米国の名門政治雑誌「ニューリパブリック」で起きた若手記者による記事の捏造事件を描いた作品。この捏造をスクープするのは、まだ黎明期にあった米経済誌「フォーブス」のウェブ版「Forbes.com」。当時はひとつ下に見られていたウェブメディアが調査報道によって、格上とみられていた雑誌(紙)の虚妄を追及する世代交代の話として見ることもできる。この映画で紹介される「ニューリパブリック」の記事チェックシステムも精緻なのだが、それでも信頼を逆用されると、捏造は防げない。ラストで、「ニューリパブリック」は自らの手で、この事件を検証報道することで自浄作用を発揮し、信頼回復へと動く。いまも名門誌として活躍しているところを見ると、その自浄努力はうまくいったのだろう。
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 最後に、実名は出てこないのだが、見れば、どの雑誌か、すぐ見当がつくのが、この映画。 映画では「ランウェイ」となっているが、これは一目瞭然、モデルは「Vogue(ヴォーグ)」。原作者も「Vogue」で編集長アシスタントをしていたと「ウィキペディア」に出ていた。欧米の女性誌の世界がわかる。しかし、こういう編集者は雑誌の世界ではよく見かける感じもする。加えて、仕事ぶりも部下を奴隷のようにこき使うカリカチュア的な部分を除けば、真摯な感じも。
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 で、本当の「Vogue」の編集現場を知りたいならば、この本がお薦め。
ヴォーグで見たヴォーグ (文春文庫)

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 著者のグレース・ミラベラは「Vogue」の編集長を務めた人。歴代名物編集長のキャラな人柄も描かれていて、高級女性ファッション誌の世界が見える。