北朝鮮が韓国の島を砲撃。異例の陸上攻撃で一段と高まる朝鮮半島の緊張

韓国の聯合ニュースなどによると、朝鮮半島西側の黄海上の南北境界線付近にある韓国領、延坪島ヨンピョンド)付近で23日午後2時34分ごろ、砲弾約50発が着弾し、一部は同島内の陸上に着弾した。韓国軍当局は北朝鮮が海岸砲を発射したものとみて、約30発対応射撃した。北朝鮮が陸上に攻撃したのは極めて異例だ。

 午後に入って衝撃のニュース。住民2人、韓国軍兵士4人が負傷し、住民には避難命令が出て、炎上している民家もあるという(追記:その後、負傷者が増え、韓国兵2名の死亡が確認された)。北朝鮮の王位継承を前に冒険主義に出てきているのかどうか。貧者の恫喝に歯止めがきかなくなってきているような...。大体、こんな話があったばかり...

ヘッカー米スタンフォード大教授(元ロスアラモス国立研究所長)は米紙ニューヨーク・タイムズの取材に、今月訪問した北朝鮮で秘密裏に建設されたウラン濃縮施設で「数百の遠心分離機を見た」と証言した。北朝鮮側は「2000台が既に稼働中」と主張したという。北朝鮮は09年6月、ウラン濃縮作業への着手を表明していたが、実際に確認されたのは今回が初めて。大規模濃縮が事実なら核実験に使われたプルトニウム型のほかに、新たにウラン濃縮による核兵器開発への道が開かれたことになる。

 またまた秘密で核兵器の開発を進めていたわけで、水爆開発を狙っているのではないかともいわれる。そこで、韓国側も...

金泰栄(キム・テヨン)国防長官は22日、北朝鮮がウラン濃縮施設を公開したことへの対策として、1991年に韓半島朝鮮半島)から撤去された米軍の戦術核兵器を再配備する問題と関連し、「核抑止のための(韓米)委員会を通じて協議を行いながら、その部分(再配備)も検討してみたい」と答弁した。金長官はこの日、国会予算決算特別委員会の総合政策質疑に出席し、「一部で言及されている、米軍戦術核兵器の再配備を考慮する考えはあるか」という李鍾赫(イ・ジョンヒョク)議員(ハンナラ党)からの質問に対し、このように答えた。

 在韓米軍から撤去された戦術核兵器の再配備を求めるという話が浮上してきた。日本はいったい、どうするのか、問われることになるなあ。「もしも」の場合、どちらの側に立つのか。日米同盟、日韓関係からいえば、明白なはずなんだが、それでも逃げるかもしれないと、米国からも韓国からも思われているような感じも...。
 北朝鮮は王位継承期で何を考えているか、わからない。次代へ向けての権力抗争もあるのだろう。加えて、北朝鮮の保護者であるはずの中国も権力の移行期で、外交が内部抗争に利用され、西側寄りの発言はしにくそうなムードが漂う(威勢のいい好戦的姿勢は会社でも社会でもカッコいいから)。ウラン濃縮施設にも中国の目立った発言はない。韓国メディアを読んでいると、韓中の経済関係がこれだけ進展しても、北朝鮮に深いシンパシーを持っている勢力が中国指導部に多いんじゃないかと疑っている様子。
 結局のところ、権力移行期の北朝鮮、中国、日本の迷走が事態をさらに複雑し、不安定にしているんだろうか。誤解が誤解を生むことが一番怖い。
【追記】英国メディアの醒めた論調
 次第に、今回の事件をどうみるか、という記事が出てきたが、英国メディアは英国人らしく醒めている。まずフィナンシャル・タイムズは...

The next few days will be tense. More violence is possible. But in the end the US and China have few options but to try and calm both sides down, and persuade everyone to return to the table. Bombing Yongbyon, the nuclear facility, is not an option; Bill Clinton did the horrific sums back in 1994. In short, the US has no good options, ergo it will have to talk in some form; albeit with egg on face and through gritted teeth. It looks like back to jaw-jaw in some form ? but for even higher stakes than before.

 米国に「良い(北朝鮮政策)オプション」などない。戦争はできない(この記事にもあるように、1994年にクリントン政権北朝鮮空爆寸前まで行ったといわれているが、今はそこまで踏み切れないだろう。そこを北朝鮮に読まれてしまっているんだが...)。そうなれば、結局は北朝鮮との協議の席につかざるを得ないという論調だが、しかし、共和党が支配する議会で、オバマにそうしたことができるのだろうか。
 で、Economistは...

Much depends now on how China responds to this incident. Beijing's continued support for its rebellious step-child may be of mutual benefit to the leaders of both states, but there surely must be a limit to how much aggression can be tolerated. In classic fashion, a Chinese foreign ministry spokesman has already expressed "concern". South Korea and America will be hoping for a little more than that in the coming days. Regardless of what happens next, today's events are a sobering reminder that the two Koreas remain officially at war.

 結局、北朝鮮を支える中国次第。その中国の態度も煮え切らない。で、最後の落としは、韓国・北朝鮮は公式には「戦争状態」なんだよね、という話。確かに今は「休戦状態」。
 そんなことを思い出してか、この事件をきっかけに、ウォンも円も売られている。明日の東京市場がどうなることか。このところ、日経平均も回復してきていたし、朝鮮半島リスクを見て、とりあえず売りから入ってくるのだろうか。