北朝鮮に対してハードパワーを見せつけつつ、中国に対するソフトパワーを探求する韓国は大人だなあ

 韓国にとって米韓合同演習ばかりが安全保障政策ではない。北朝鮮に対して軍事演習でマッチョな姿勢を見せる一方で、中国に対する配慮を忘れない。というか、北朝鮮が崩壊し、南北統一後の朝鮮半島も睨んで、米韓一辺倒ではなく、韓中の関係強化も模索する。そんな韓国のしたたかさが韓国「中央日報」の社説に伺える。具体的には、こんな具合...

統一後も中国との関係設定はわれわれの運命がかかった死活問題にならざるをえない。韓米同盟は大切な資産だが、中国との関係では負担でもある。米中関係が悪化した場合には選択を強要される境遇になりかねない。悩んでばかりいる時ではない。国家的な知恵と力量を総動員して長期的な対中戦略を立て、具体的な実行計画をまとめて緻密に履行していかなければならない。政府が外交通商部傘下の外交安保研究院に中国研究センターを設置したことはこういう問題意識の現れであろう。 中国研究センターは特定の国名が入った政府レベルで初めてのシンクタンクだ。研究センターを通じて中国に関する知識と情報を蓄積し、中国に対する理解を深めるのは重要だ。正確な診断があってこそ正確な処方も出せる。内外の専門家グループとの活発なコミュニケーションを後押しするネットワーキングも必要だろう。政権の変化を跳び越える長期的見識で戦略を樹立し、これを政策に積極的に反映するシステムも整えなければならない。

 朝鮮半島が統一され、韓国が直接、中国と国境を接するようになったとき、「韓米同盟は大切な資産」だが、一方で不安定要因でもあることを考え、中国との関係の重要さを指摘する。と同時に、そのためにはまず中国の実態を研究することの重要性を指摘する。冷静だなあ。そして、こんなくだりが続く。

こうした努力に劣らず重要なのは公共外交(public diplomacy)を通じ、韓国に友好的な世論を作ることだと考える。われわれと体制が違うとしても、世論の動向に気を遣わないわけにはいかないのは中国も同じだ。情報技術(IT)の急速な発展は市民の活発な意思表明を可能にしている。中国のネットユーザー数だけで4億人だ。知らず知らずに中国ネットユーザーの世論は中国政府の政策にも影響を及ぼすほかない。相手国の国民の心に食い込む公共外交はソフトパワーを重視する21世紀外交のトレンドでもある。きのう米国務省が発表した「4年ごとの外交・開発政策見直し(QDDR)」が提示したキーワードのひとつも公共外交だった。クリントン国務長官は「21世紀の外交官は該当国の外務省担当者だけでなく、田舎の部族の元老にも会わなければならず、縞柄スーツだけでなく作業着も着なければならない」という話で公共外交の重要性を強調している。

 中国のネット世論にも注視し、草の根外交の重要性を説く。韓国もネットユーザー大国だから、ネットユーザー同士の平和的関係は国の関係につながっていくのだろう。このあたり冷静だし、世の中を見ているな。日本ではあまり見ない論調。ネットユーザーを毛嫌いするのではなく、どう付き合っていくのかを考える。草の根の交流の深化こそが相互理解と和解への道であり、朝鮮有事を回避する答えもそこにあるのかもしれない。軍事的な抑止力を強化しつつ、ソフトパワーにも配慮する。大人だし、それだけ苦労しているんだなあ。
 日本の外交は民主党政権になってから、混迷の度を増しているが、緻密な分析と戦略、そして冷静な行動が必要なのだろうな。どうも感情論ばかりで不安。
 韓国と中国というと、北朝鮮問題をきっかけに関係が悪化しているみたいだけど、先日、こんな話が「中央日報」に出ていた。

 中国と日本の領土紛争で中国内の反日感情が深まる中、韓国が日本に向かう予定だった1万人規模の中国人団体観光客を誘致した。韓国観光公社北京支社は13日、「(韓国が)中国企業の宝健の海外観光団1万人を誘致した」と明らかにした。観光公社によると、これまで韓国が誘致した団体観光客規模では過去最大という。 (中略)宝健の大規模観光団は来年10―11月に中国全域から出発し、済州(チェジュ)とソウルを5泊6日で回ることになると観光公社は伝えた。この期間中に済州(チェジュ)で1000―1500人規模の会議も開く予定で、観光特需が予想されている。

 尖閣問題で訪日を取りやめた中国の観光団、どこへ行ったのかと思ったら、済州島に行っていたのだ。中国も韓国も領土をめぐり日本との間に問題を抱えている。日本は韓中の仲人役を務めるのかもしれない。でも、それで、日本はどうなるのよ...、という感じがするけど...。口先だけの「東アジア共同体」よりも、韓国の地道な努力のほうが地に足がついた「外交」という感じがするな。日本の外交が不安になる今日このごろです。
【追記】
 韓国は和戦両様で緻密な戦略をとるが、日本は...。防衛大綱が出たけれど、その内容は...。

政府は17日午前、安全保障会議閣議を開き、今後の国防の指針となる新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を決定した。新大綱は、軍備の増強を続け海洋進出を活発化させる中国を「地域や国際社会の懸念事項」と明確に位置付け、自衛隊配備の空白地帯となっている南西諸島の防衛を重視した。併せて、テロやゲリラへの対処も掲げた。その上で、こうした情勢変化に対応するため、部隊を全国均等に配置する「基盤的防衛力構想」を転換、自衛隊の機動性や即応性を重視する「動的防衛力」の構築を打ち出した。

 強気なのはいいけど、和戦の「和」の部分の戦略はどうなっているのだろう。敵と名指しすることに意味があるんだろうか。気がついたら、韓国は中国との間で良い関係をつくり、日本はアジアで孤立して、米国の尖兵として押し出されるなんてことになったりして。日米同盟を基軸にしつつ、中国との関係ももっと緻密に組み立てなくていいんだろうか、韓国みたいに。不安だなあ。地続きの国と島国とでは、安全保障に関するリアリティが違うのだろうか。
中国の朝鮮半島政策―独立自主外交と中韓国交正常化 未来をひらく歴史―日本・中国・韓国=共同編集 東アジア3国の近現代史 現代韓国の安全保障と治安法制