関東大震災の直後、商魂逞しい出版人は、震災後の金もうけノウハウ本を出していたらしい

 東日本大震災から10日余り、関東大震災の時は、世の中はどんなだったのだろうかと、染川藍泉の『震災日誌』を本棚から引っ張りだして、拾い読みしてみた。震災後、部下に会社を守るように命じて、さっさと帰ってしまう上司に怒っていたり、染川の日誌も生々しいのだが、巻頭に収めれれた成田龍一の「解説・関東大震災と『帝都』復興」が当時の様子を概観していて興味深い。例えば、こんなくだり。

 都市機能の回復は九月五日に電灯と電話が復旧したのをはじめ、徐々に電車・市電が運転を開始し、十月にガス・水道が供給を再開するまでほぼ2ヵ月を要したが、その間人びとは不自由ななかで驚くべき活力をしめす。とくに商売面が顕著で、いちはやく野天にすいとん屋、ゆであずき屋、牛丼屋があらわれ、バラック床屋や人びとの重要な乗り物となった自転車の実費修理屋、開かなくなった金庫を請け負って破る商売まで出現した。
 また『バラック生活の暮し方』『大震災後の金もうけする方法』『大震災後に於ける金儲の東京』という文字どおりあらゆる金もうけの方法を開陳したパンフレットが震災の翌々月には多数出版された。

 関東大震災が発生したのは、1923年9月1日。当時としては復旧は速いし、みんな商魂たくましいなあ。震災後の金もうけノウハウ本なんて、思いついたとしても、いまの出版社には、恥ずかしくて、とても出せないなあ。で、政府の動きも早くて、9月7日は「暴利取締令」を出しているという。当時は、遷都論もあったらしい。古くて新しい話がいろいろとある。

震災日誌 (1981年)

震災日誌 (1981年)