天竜川下り事故。船頭さんは66歳。経験3年、舵取り半年足らず...。地域の技能者は若手人材不足で高齢化?

乗員は2人。船首のガイドは観光案内を行い、かじ取りを船尾の船頭が行う。転覆した船は、行方不明の××さん(66)がかじを取っていた。××さんは3年目の船頭で、かじ取りを始めたのは今年3月からという。8月中は週に3、4回勤務していた。

 川下りの舟で66歳の船頭さんをみたら、頼もしいと思うだろう。30代の船頭さんと60代の船頭さんがいたら、60代に安心感を覚えるだろう。それは年齢のうしろに経験をみるからだ。しかし、天竜川の舟下りの事故は、こうした常識を軽く転覆させてしまった。60代の船頭さんを見れば、その顔のシワに20年なり、30年、あるいは40年の経験を読む。まさか、船頭歴3年。63歳から船頭を始めた人とは思わない...。しかも、かじ取りになってから、半年もたっていないなどとは想像もしないだろう。入社3年といえば、大卒であれば、20代半ば。高卒であれば、20代になったばかりのお兄さんかあ。研修を終えて、独り立ちして半年みたいな...。数字だけでみると、新人さんの事故...。
 このあたりの事情に関する報道がないので、よくわからないが、それだけ地域では若い人が不足しているのだろうか。日本の問題、地方の問題が、こんなときに、ひょっこりと顔を出すのだろうか。どこの観光地でも同じようなことが起きているのだろうか。それとも、熟年のほうが安心というイメージ重視で、役者さんと同じように、老練な船頭さんを演じているだけだったのだろうか。観光会社自体が本音では危険性を軽視していたのだろうか。誰にでもこなせる仕事だと...。そうだとしたら、何だか、怖い話だなあ。船頭さん任せの舟下りよりも、ライフジャケットを着込んで激流をくだるラフティングのほうが安全に思えてくる。

天竜川百話

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