チャールズ・R・モリス『世界経済の三賢人』
- 作者: チャールズ・R・モリス,有賀裕子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/01/21
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
3人の中では、バフェットが一番「いい人」そうに見えるのだが、この本を読んでいると、底値買いの達人のように見える。株価が暴落した時が買い場と思っているような感じ。一般には、困った企業の救世主として語られることが多いが、モリスの解説では、株式の買取条件はかなり厳しいというから、やはり投資家としての厳しさを持っている。そうでなければ、あれほどの巨富を築くことはできなかったのだろう。バフェットはミクロを見て、ソロスはマクロを見る感じで、政治・経済を分析し、大局観を持った上で勝負に出る。最近もアベノミクスから円安・日本株高を読んで、10億ドルを超える利益を出したというが、ソロス流は健在の様子。
面白かったところをいくつか抜書きすると...
『ウォール街のランダム・ウォーカー』では、効率的市場仮説を強調しているが、これについて、ソロスは否定的。
再帰性と頻繁なバブルの発生、そしてバブルが破裂しそうなまでに膨らみかねない事実は、自律的な市場を「効率がよい」とするシカゴ学派の教義がいかに皮相なものであるかを白日の下にさらしている。ソロスの言葉は「何といっても、もし市場がそれほど効率的なら、これほどおかしな動きばかりしているはずはありませんよね」というものだった。「それに、市場が判断を誤る可能性に賭けて、自分がこれだけの巨富を得られるはずはないでしょう」とも言いたかったのかもしれない。
なるほど。そのソロスの投機哲学。
「一般原則として、土台となる理屈が否定されないかぎりポジションの解消は行わない。むしろ、新たな理屈をもとに逆方向のポジションで建てる。これによって生じる微妙なバランスは間断なく調整していく必要がある。
短期トレード派の人たちは、理屈が否定されない限り、継続と、よく言う。逆方向のポジションも取らない人がいる。その代わり、理屈が間違っていたと判断したら、すぐに「損切り」というが。
バフェットは、投資に関する警句を発することが多く、いろいろな言葉が紹介されている。「投資家とCEOの馴れ合いについて」とうところで紹介されていた言葉。
「大群で移動する旅ねずみは、種全体にとしては嘲られるかもしれませんが、一匹一匹が矢面に立たされることはありません」
こうした「みんなで渡れば怖くない」的な発想は洋の東西を問わないのだな。
モリスは、シカゴ派も、ケインズ派も、古典派も、経済学に対して批判的。特に、経済学者や、その信奉者たちの「視野の狭さ」を問題にする。経済学のモデルの中で物事を見ようとして、現実を見ようとしない。ここで紹介された3賢人の特徴は、数字だけで世の中を見ていないことかもしれない。そして人間は間違えるということを知っていることだろう。そして、間違えるけども、それを正す力、逆境でも生き残る力も持っていることも知ることで、いたずらに悲観主義に陥ることもないのも特徴だろう。
★ ソロス・ファンド、円安見込む取引で10億ドルの利益=WSJ | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters