田村秀男『財務省「オオカミ少年」論』

財務省「オオカミ少年」論

財務省「オオカミ少年」論

 2012年1月の出版と、1年余り前の本で、当時の消費税増税論議の中で、デフレ下の増税は経済にダメージを与えると反対し、インフレ目標の導入による脱デフレや日銀による政府保有外債の買取による復興資金づくりなどを提唱している。インフレ目標の導入などアベノミクスを先取りしている。というか、バーナンキ型の金融政策がデフレ対策として有効ではないかというのは、見る人は見ていたのだなあ。この本を読むと、白川日銀総裁は金融政策の研究が趣味というような人らしいが、日本は、世界の経済学を超える「独自」の金融理論づくりに付き合わされてしまった感じだなあ。バーナンキFRB議長に対応心を燃やすのはいいけど、結果を出さないことには…。日銀総裁は評論家じゃないんだから。
 日銀は安倍首相の批判を受けて、方向転換しそうだが、この本の主役でもある財務省の方はどうなのだろう。君子豹変して、いつの間にか、日銀を批判する側にまわり、すべての責任を日銀に押し付けて、自分は権益拡大に勤しむのだろうか。日銀総裁の席を奪取することに奔走している感じだし...。安倍首相の心中はわからないが、麻生財務相はかなり財務相寄りの保守的な人のようだし、第2次安倍政権でわからないのは、財務省を本気でどうしようと思っているかだなあ。まあ、変に財務省に妥協するのではなく、といって敵にも回さず、自分の心中を読ませず、敵か味方か、わからないようにする作戦を展開しているのだとしたら、安倍首相は前回と違って首相としてかなり進化しているような感じだけど。
 で、目次で内容を見ると...

第1章 「増税しなければ財政破綻」は真っ赤なウソ
第2章 オオカミ少年財務省 だましのテクニック
第3章 脱円高・脱デフレこそ最優先事項だ
第4章 「世界通貨戦争」に負け続ける日本
第5章 増税なしの「100腸炎日本再生計画」

 1年あまり前の本なので、財務省に取り込まれた民主党政権批判が激烈。第3章は、現在の安倍政権の政策につながる。ただ、安倍政権、消費税はどうするのだろう。今から旗幟鮮明にする必要ないけど。