ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

 アン・リーが監督賞を受賞した2012年の映画(日本公開は2013年)。映像が幻想的であり、かなり凝っている。インド人が主人公で、太平洋が舞台だが、どこまでが現実で、どこからが妄想か、主人公の回想は米国のホラ話風というか奇譚的な味わいがある。トラとの漂流場面をテレビのCM映像でかなり見ていたこともあり、そこで抱いた事前の印象と違って、旅に出るまでに、いくつものエピソードがある。そして、ラストにもうひとつの物語が語られ、それがこの映画の陰影を深いものにしている。人間が生きていくうえには、物語が必要なのだなあ。貨物船のコック役で、なぜかジェラール・ドパルデューが出ていた。