和田誠『お楽しみはこれからだ PART6』

お楽しみはこれからだ〈PART6〉映画の名セリフ

お楽しみはこれからだ〈PART6〉映画の名セリフ

 和田誠が選んだ映画の名セリフ集。本棚を整理していたら、出てきて、つい読みふけってしまった。昔なつかしい名画やらカルトムービーからの台詞が多いが、人生の名言集みたいな感じもする。どこからでも読めるし、和田誠のイラストをみているだけでも楽しい。
 そんな中から目に止まった台詞。

「この国の問題を知っていますか。目的を持たない人と、目的に向かって急ぎすぎる人の、どっちかしかいないことです」

 1948年の米国映画「気まぐれ天使」からの台詞。何だか今の日本を言っているみたいだけど、60年以上前の米国を言ったもの。人間も、社会も、そんなに大きくは変わらないのだな。
 もう一つ、こんな台詞...

「人間は平和を保つために武器を持とうと考える。使えば人類が滅亡する武器を」

 1959年の米国映画「渚にて」からの台詞。核戦争後の人類の黄昏を描いた映画で、核兵器批判の言葉。しかし、いま、これを読むと、前段の言葉は「積極的平和主義」と重なってくる。安倍政権がどのような意味合いで「積極的平和主義」という言葉を使っているのか、わからないが、この言葉の行き先には「核武装」という選択肢も浮かんでくるのではないか−−そんなことも連想させてしまう台詞。
 1996年出版の本で、取り上げられている映画は当然、それよりも前のものなのだが、その台詞は今の時代でも通用する普遍性を持っている。というか、今の時代で読むと、ずっしりと来るものも少ない。このほかにも思わず微笑む言葉、心に響く言葉、切ない言葉、さまざまな台詞が紹介されている。
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