バンドン会議の安倍首相スピーチ。反省は「remorse」なのか。悪行に対する反省?

 昨日のアジア・アフリカ会議バンドン会議)60周年記念首脳会議における安倍総理大臣スピーチ。ハイライトはここだったのだろう。

 私たちは、今また、世界に向かって、強い結束を示さなければなりません。
 その中で、日本は、これからも、出来る限りの努力を惜しまないつもりです。
 “侵略または侵略の脅威、武力行使によって、他国の領土保全や政治的独立を侵さない。”
 “国際紛争は平和的手段によって解決する。”
 バンドンで確認されたこの原則を、日本は、先の大戦の深い反省と共に、いかなる時でも守り抜く国であろう、と誓いました。

 日本語で読むと、この反省が何に対する反省なのか、よくわからない。「侵略」という言葉はバンドン会議の原則について語っているもので、大戦について、どう反省しているのかが見えてこない。右派の人々にとっては、よくぞ、謝罪せずに乗り切ったという話になるのかもしれない。で、このあたり、英語だとどうなるのかと外務省のサイトを見てみると...

Once again, we must show our strong unity to the rest of the world.

Japan is resolved, in these circumstances, to continue to do its utmost from now on, just as it has thus far.

"Refraining from acts or threats of aggression or the use of force against the territorial integrity or political independence of any country."

"Settlement of all international disputes by peaceful means...."

Those are some of the principles Bandung affirmed. And Japan, with feelings of deep remorse over the past war, made a pledge to remain a nation always adhering to those very principles throughout, no matter what the circumstances.

 「先の大戦の深い反省」は「deep remorse over the past war」となっている。英語は不得意なんで、この「remorse」という言葉をweblioで検索してみたら...

remorse(名詞)
(通常、悪行に関しての)深い後悔
(a feeling of deep regret (usually for some misdeed))

 「悪行に対する後悔」というニュアンスを持った「反省」なのか。英語としては「先の大戦における日本の悪行に対する深い後悔」というように聞こえるのか。日本語の「反省」よりも、もうちょっと踏み込んだ感覚なんだ。
 国内の日本語社会に向かっては、歴史認識を迫る中国、韓国に対して強いイメージを保ちつつ、英語の世界では日本の歴史の「悪行を後悔」という謝罪的ニュアンスを出しているのか。日本語と英語という言語ギャップを利用したスピーチ戦略だったのだろうか。韓国が抗議しているのは、韓国語訳の問題だろうか。中国が静かなのは、英語で理解しているから?

 来月予定されている米国議会の演説でも、日本語しては顎が上がり、英語としては顎を引いた表現になっているんだろうか。そういえば、FACTA慰安婦問題について英語と日本語のスピーチの問題を書いていた。

独りよがりの「安倍訪米」:FACTA online

 英語のプレゼンテーション力は大切だな...

プレゼンテーションの英語表現 (日経文庫)

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 でも、過信すると...
歴史をかえた誤訳 (新潮文庫)

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