「ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実」と「疑惑のチャンピオン」を見て

 今日のWOWOWは、ツール・ド・フランス7冠のランス・アームストロングのドーピング・スキャンダルを描いたドキュメンタリーと劇映画の2本立て。つい見てしまう。
 ドキュメンタリーが

 劇映画版は
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 ドキュメンタリーを見ると、劇映画版も事実に忠実に映画化しているのがわかる。ガンから奇跡的に復活、そしてツール・ド・フランス制覇というのは、ドラマ以上のドラマだったが、本当に作られたドラマだったのだなあ。ドーピング疑惑が囁かれながら、それを告訴やら何やらで、潰していった様は、本当にクソ男、人間のクズといった感じ。ただ、アームストロングだけを責めるのも不公平で、背景にはカネにまみれたスポーツの現状がある。ドキュメンタリーの方をみると、ガンから奇跡の復活で優勝というドラマに、スポーツ界自体がカネの匂いを感じ取った。国際自転車競技連合(UCI)は、アームストロングにドーピングの疑いが濃厚なのを知っていながら、目をつぶっていた(ときには、隠蔽を手助けした)雰囲気がある。現代スポーツはドーピングの歴史ともいえるのだなあ。
 ドキュメンタリーで、ドーピング疑惑を否定する実際のアームストロングを見ると、この人は、相手のまっすぐ目を見ながら、嘘をつくタイプの人だと思う。FRB元議長のアラン・グリーンスパンがワシントンでは、相手のまっすぐ見て、笑いながら嘘をつく世界というようなことを言っていたが、アームストロングも政治家向きの人間だったのかもしれない。権力を施行し、それを使い、友と敵を分け、どんなに仲が良くても、相手が自分に不利なことをいえば、容赦しないところも。政治家だよなあ。
 見ていると、本当に友人たちまで破滅に追い込もうとする姿を見ると、クソで、クズだと思うのだが、その一方で、かなり厳しいガンという絶望的な状況から厳しい各額療法とリハビリを経て復活したことは事実であり、がん患者救済のための支援活動をしていたことに偽りはない。このあたり、人間というのは複雑な存在だと改めて思う。がん患者を勇気づけ、巨額のガン撲滅資金を集め、スポーツを通じて人々に感動を与えたことも事実ならば、大嘘つきで、優勝をカネで買ったこともまた事実。どちらもアームストロングなのだなあ。
 病気など死を間近に感じる体験をすると、人生観が変わり、人間は一回りも二回りも大きくなるという説があるが、誰もがそういうわけではないのだな。もともとが、俺が俺が、という傲慢でプライドの高い若者だったようだが、大病を経ても、人間性そのものは変わらなかったのかなあ。それも含めて、人間とは、不思議だなあ、と思わせる。
 ドキュメンタリーと劇映画を続けざまに見ると、「疑惑のチャンピオン」の俳優たち、本物に結構、似ている。また、同僚選手が告発に踏み切る心情などは、劇映画のほうがよくわかる。 アームストロング、絶頂期に、こんな自伝も出していたんだけど…。