「国税は国家の暴力装置」と言っていた人がいたなあ、と思い出してしまった

 新しい国税庁長官、最近、話題です。

国税庁は8日、7月5日付で国税庁長官になった佐川宣寿(のぶひさ)氏(59)の就任記者会見をしない方針を決めたと発表した。佐川氏は学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡り、財務省理財局長として国会で事実確認を拒み続けたと野党から批判されていた。会見でこの問題を追及されることを回避する狙いがあるとみられるが、説明に消極的な姿勢に批判が高まる可能性がある。

 この沈黙、怖いなあ。昔、知り合いの大企業の財務担当役員氏が声を潜めて、こう言っていたのを思い出した。
国税は、国家の暴力装置なんだよ」
 何でも社長がメディアで税制批判をしたところ、突如、税務調査が入ったのだという。一応、「通常の調査」という建前だったらしいが、現実にはそれまでの数年に一度というサイクルから外れた異例の調査。加えて、調査内容も、それまでになく厳しく、会社だけでなく、経営者個人の税務申告も洗い直されたのだそうだ。税制批判をした社長は就任したばかりだったらしいのだが、社長に届いた取引先からの就任祝いの品も雑所得とされ、申告漏れ、追徴課税され、経営陣は震え上がったのだとか。それ以来、その会社では税制批判はタブーとされ、沈黙することとなった。「検察・警察だけでなく、国税も国家の暴力装置なんだよ」というのが、その経験を経ての役員氏の実感だったのだとか。今は変わっているかもしれないけど、何だか、いかにもありそうで、怖いなあ。
 一方、歯に衣着せぬ政府批判を展開していた某メディアに税務調査が入った際、やたらと細かく帳簿やら伝票を求められたなんていう話も聞いたことがある。ここは一応、定期的な税務調査だったらしいが、原稿料、取材協力費、飲食費の宛先をチェックすることで、ニュースソースやら匿名の執筆者やらを探ろうとしているんじゃないかと疑っていた。情報漏れの犯人探しの一翼を担っているような感じで、怖いなあ。ま、本当に単純な税務調査で、調べられた側が神経質になり過ぎているのかもしれないが、身構えるのもわかる気もする。
 国税って、「マルサの女」みたいに社会的負担の公正のために戦う機関という面もあれば、カネの流れを通じて威圧する治安機関の面もあるように思える。新しい国税庁長官は、どっちの顔をこれから見せるのだろう。会見も開かずに黙っているところが怖いなあ。いろいろと好き勝手に書きやがって。次の税務調査の時に覚えていろよ、と思っているのか、それとも、勝海舟の「毀誉は他人の主張、行蔵は我に存す」という言葉のように、何をいわれても、ただ黙々と社会的負担の公正さを追求するという職務を果たしていく人なのか。どっちなんだろう。これから、もしメディア絡みの申告所得漏れみたいな話が出てきたら、どう考えたらいいのか。どっちの顔を思い浮かべるのだろう。

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