「国際情勢は複雑怪奇」と言わないために、朝8時のNHK-BS1「ワールド・ニュース」は役に立つ

 ヒットラーナチス・ドイツスターリンソ連独ソ不可侵条約を結んだとき、平沼騏一郎内閣は「欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢」といって総辞職した。ナチス共産党政権が手を組む。驚天動地といえば、驚天動地だが、誰も予想していなかったわけではない。例えば... 

ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

 

  ドラッカーは、独ソ不可侵条約が結ばれた1939年8月の数カ月前に出版された『「経済人」の終わり』のなかで独ソ同盟を予見していた。幅広く情報に目配りすると同時に、断片的なインフォーメーションを評価、分析し、その背後にあるコンテクストを読み取り、インテリジェンスにまで高めることで、見えてくるものがあるのだなあ。現実を直視し、虚心坦懐、可能性を考えることで、「想定外」と慌てずに済む。そのためには多様な視点が何よりも重要なんでしょう。

 来週に予定されている米朝首脳会談も、日本のニュースばかり見ていると「複雑怪奇」とつぶやきたくなるが、一歩、引くと、また違う風景が現れる気がする。そんなことを教えてくれたのは、NHK-BS1がウィークデイの毎朝、午前8時から放送しているワールドニュース

ワールドニュース - NHK

 BS1のワールド・ニュースは各国の放送局のトップニュースを10分ぐらいずつ、そのまま同時翻訳で流す番組。各時間帯によって、放送局の組み合わせが変わるのだが、この午前8時からのワールド・ニュースが一番、放送国のバランスがいい。午前8時の場合は、こんな具合...

  英国のBBC、韓国のKBS、スペインのTVE、米国のABC、フランスのF2。英国は欧州、米国のみならず、中東、アフリカ、アジアなどの情報にも強い。韓国のKBSは、朝鮮半島の主役だけに米朝会談の情報は日々、詳しい。TVEは、スペインのみならず、中南米などスペイン語圏の情報力はあなどれない。そして、米国は現在の覇権国家。最後のフランスは英国とはまたちょっと違って大陸側の欧州の視点を持ち、アフリカにはフランス語圏の国家があるから、こちらにも強みを持つ。50分で世界を概観できる。

 各国メディアの取材力の凄さを感じたのは、フランスのF2がトランプ大統領米朝首脳首脳会談を発表する以前、ポンペイ国務長官(前CIA長官)訪朝報道よりも先に、米CIAと北朝鮮の関係者がスウェーデンで秘密交渉をしていると報じたこと。欧州大陸は、フランスにとっては自分の庭だから、そこでの出来事となると、米朝問題であっても取材網に引っかかるんだなあ。

 日本のテレビの情報番組で、何が専門なのか判然としない専門家が、どれだけ自分で取材、調査したのかわからない話をしているのを聞くよりも、英国・韓国・スペイン・米国・フランスの記者たちが取材したストレート・ニュースを聞くほうがインパクトがあるし、参考になる。

 加えて、世界のジャパン・パッシングぶりも感じてしまう。ほとんど話題にならない。森友・加計問題がスルーされていることは政権にとってうれしいだろうが、ご自慢の日本外交もニュースにならない。最近、話題になったのは、是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ映画祭パルムドールを受賞したことと、英国の原発に日立や日本政府が資金支援するということぐらい。前者は、うれしい話。後者はBBCが報じていたが、自分たち英国の原発の話であり、カネもらう話だもんなあ。ちょっと微妙。

 ともあれ、忖度なしの報道で、世界の現在位置を知るために、朝8時の「ワールド・ニュース」、役に立ちます。録画して見ています。米朝首脳会談、各国がどう報じるのか、今から楽しみです。