ワールドカップ・ベスト16で散った日本。「日本サッカーの未来」への期待は選手たちの言葉の中に

 日本が初のワールドカップ・ベスト8を賭けた決勝トーナメントのベルギー戦。柴崎のスルーパスを受けた原口の先制点、そして香川のパスを受けた乾の美しいミドルシュートが決まった2点目。2-0となったときは、シメオネの言葉は正しかったのだな、と思った。

これは競技だ。良いプレーをした者が勝つのではなく、自信を持ってやっている者が勝つのだ。チームに自信を持ってプレーしている者が多ければ、良いプレーをした者が多いチームよりも勝つ可能性が高い。

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  初戦のコロンビア戦勝利で得た自信がどれだけ大きかったのか。改めて痛感する。しかし、ベルギーがモジャモジャ頭のフェライニに投入すると、流れが変わり、2対2の同点、それでも、ここまではある意味、予想の範囲内だった。

 2013年、ザッケローニ監督時代、日本はベルギーに3対2で勝っている。その経験から、こんな試合になるのかもしれないと考えていた。

2013年当時、ベルギーはFIFAランク5位で、日本は44位。下剋上の再現なるか。あれから日本のディフェンス力が向上したわけでもなく、日本が勝つとしたら、点の取り合いで同じようなスコアだろうか。決勝トーナメントはまずは負けない試合展開で、PK戦になることも多いけど、どうかな。

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  2対2までは想定範囲。問題は3点目がどちらに転がり込むのか。あるいは、ロシアのように粘りに粘って、PKまでもつれ込ませることができるのか。キーパーのクルトワと川島、PKは日本にとって有利か不利か、そんなことを考えながら、見ていたら、最後の最後にカウンターを浴びての敗戦。日本の課題としてディフェンスをあげる声は以前からあるが、やはりディフェンスで決まってしまうのかあ。

 セットプレイから攻守一転してのカウンターは最も危険なケースといわれている。だが、日本には、その準備がでていなかったのか。素人考えで、そう思っていたら、海外メディアからは、こんな指摘が...

 ワールドカップの試合を放送している伊『メディアセット』の討論番組にゲスト出演したカペッロ氏は「私が日本代表監督なら、本田の首根っこに掴みかかって怒っていただろう。もうすぐ94分(で延長戦間近だった)。本田がコーナーキックを蹴ると、そのままクルトワがキャッチして数秒後にはカウンターアタックに移った。彼はボールをキープしてホイッスルを待たなければならなかった。純粋に無責任だ」

名将カペッロ、3失点目に繋がった本田圭佑のCKを糾弾「首根っこ掴んで怒りたい」【ロシアW杯】 (フットボールチャンネル)

 フランスの放送では、こんなコメントがあったとか...

本田のFKはクルトワを脅かした。そして直後にCKを蹴るのだが……これが致命傷となる。あっという間にベルギーのカウンターの餌食になったからだ。そのとき、世界王者ジョルカエフが静かに口を開いた。
「エクセ・ド・コンフィアンス(過信)ですね。自己過信がこれを招いたのです。3点目を入れられると過信して、ゴールを狙った。その結果ベルギーに絶好のカウンターチャンスを与えてしまったのです。自己過信はいけない。過信せず、延長戦に行くべきでした」
 このジョルカエフの静かな口調が、スローモーションのようにベルギーのカウンターに乗って流れ、気づくと試合は終了していた。

「自己過信が招いた結末」「カガワは模範」仏メディアが日本代表のW杯を総括!【ロシアW杯】 | サッカーダイジェストWeb

 カウンターに対する準備以前のところに問題があったというのか。リスクをとるべき局面とリスクを回避すべき局面、こうしたことは経験から蓄積されていくのだろう。

 この試合結果に、テレビはいつものように「感動をありがとう」の嵐。メディアは思考停止の状態のようにみえる。というか、伝統芸能のように決まりきった画面づくりとコメントで埋め尽くされる。サッカー協会も自画自賛が始まるのか。

 絶望しそうになるが、希望は現場にこそある。選手たちの発言は頼もしい。例えば、乾は...

「やはりチームとしては結局勝ったのは相手が10人のコロンビア戦だけで、他の試合は一つも勝てなかった、今日もそうですし、勝てそうで勝てない試合がこれだけ続くと、やっぱり出ていないメンバーにも申し訳ないですし、ここまで来てもらったファン、サポーターの方にも申し訳ない気持ちで今はいっぱいです」

乾貴士、日本代表の未来に言及「この悔しさを知っている選手、スタッフで続けて」 | Goal.com

 満足していない。それが明日を切り開く。そして、長友は...

「ハリルさんには感謝しています。ハリルさんのデュエルや走るというベースがチームにあったし、やっぱり本大会では戦って、走って、デュエルに勝たなければいけない。そのベースの上に西野監督の経験やボールをつなぐという戦術がうまくマッチしたと思います」

戦い、走り抜いたロシアW杯…長友佑都「ハリルさんには感謝しています」 | サッカーキング

 ハリルホジッチ監督の残したもの、西野監督がもたらしたもの。良いところも、課題だったところも正当に評価してほしい。長友のように冷静に検証してほしいな。監督解任の正当化のような過去を見た評価ではなく、未来のために、ブラジル大会後、ロシア大会までのことを評価にしてほしい。

 吉田も...

「セットプレーの部分でも、高さやフィジカル的な問題っていうのはすぐ変わるもんじゃないので、育成の部分も改善して行かなきゃいけない。アジリティーの高さを生かしつつ、もっと世界に通用するような選手を輩出して行かなきゃいけないので。そこは、協会と選手がしっかり考えていく必要があります」

「経験値の部分も、次の4年で高めていかないと。ベスト16に行って優勝候補といい試合をしたという美談で終わらせたくない。課題からしっかり学んで何をしなくちゃいけないかを、協会と選手が考える。じゃないと日本は強くなって行かないと思うし、是非皆さんには厳しい言葉をお願いします」

「美談で終わらせたくない」…世界との差を感じた吉田麻也「育成も改善を」 | サッカーキング

 こうした選手たちの声を読むと、日本のサッカーの未来に希望が出てくるなあ。選手たちは考えているのだから、協会も考えてほしいところだが、そこが最も不安な点であることが悲しい。肌で世界を感じて戦い続ける選手たちと、いかにも日本的な内輪の世界の政治に明け暮れているようにみえる協会。

 メディアの役割が大きいはずだけど、すぐ安易なヒーロー物語をつくりたがるテレビや新聞、雑誌には期待できない。ここはサッカー専門メディアが選手とともに考えて問題を提起してほしいーーとサッカー好きの素人は考えてしまいます。