「ズカルスキーの苦悩」ーー忘れられた天才彫刻家のドキュメンタリー

 NETFLIXはドキュメンタリーが充実している。こちらも、そんなひとつ。

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 ポーランド出身の忘れられた天才彫刻家、スタニスラフ・ズカルスキーの生涯を描いたドキュメンタリー。コミック作家などロサンゼルスのサブカル系アーティストたちがかつて天才といわれたズカルスキーがいたこと発見し、ビデオでインタビューを録画する。その映像をベースにしながら、世間からは忘れられた(あるいは、ポーランドにとっては忘れたい)天才の軌跡を追っていく。

 レオナルド・ディカプリオが製作に名を連ねており、不思議に思っていたら、レオナルドの父のジョージ・ディカプリオはヒッピーで、アンダーグラウンド・コミックの作家をしていて、ズカルスキーと交友があったらしい。小さなレオナルド・ディカプリオがズカルスキーとともにいる写真も出てくる。

 ズカルスキーはポーランド生まれでアメリカ育ち。神童であり、彫刻の天才として注目されていたが、唯我独尊の孤高の人で批評家嫌い。一方で、晩年は語りたがらなかったが、第一次・第二次大戦間にはポーランドに戻り、反ユダヤ主義の排外的な民族主義運動で指導的役割を果たしていた過去があった。ズカルスキーの芸術作品は運動の象徴にもなった。21世紀に入り、ポーランドで再び、排外的な民族主義の動きが高まると、ズカルスキーの作品は再びシンボルとして使われているという。ロサンゼルスのアーティストたちは当初、そうした忌まわしい過去を知らなかった。

 歴史の中に埋没していくことになったのは、そうした過去のためもあったのかもしれない。自分で独自の文字をつくったり、トンデモ世界観を語ったり、紙一重の人だったようだが、晩年は、歳の離れた多くのアーティストたちに愛されていたようだ。少なくとも、こうしたドキュメンタリー作品が残されることになった。忘れられた作家であり、過去を考えると、ポーランドでは忘れたい作家でもあったのかもしれない。

 世界にはいろいろな人がいるのだなあ、と改めて感じるドキュメンタリーでした。

 Amazonで、ズカルスキー(Szukalski)を検索すると、洋書ではいくつもひっかかってくる。いまは芸術としても再評価されているのか。もはや忘れられた天才ともいえないのだろうか。

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