山田ルイ53世『一発屋芸人列伝』を読む
たまたま、あるところに「新潮45」が置いてあって、ぱらぱらとめくっていたら、この本のもとになった連載記事に出くわし、一発屋芸人が一発屋芸人について語っているのか、と思って、読んでみたら、これが抜群に面白かった。「とにかく明るい安村」の回だったのだが、話も面白いし、笑って、ほろっとさせる。髭男爵はこんなに文才があったのかと感心して、これは単行本になったら、買おうと思った。そして待望の本が出た、買った、読んだ。
面白い!帯を見ると、「雑誌ジャーナリズム賞作品賞受賞」と入っている。プロ筋の評価も高かったのだなあ。いかにして芸人が一発決め、天下をとり、そして、ブームが去った後、どのように生きているのか。いい話、せつない話、せこい話、夫婦愛、家族愛、師弟愛...さまざまな物語が語られる。「それでも、人生は続く」と帯に大きく打たれているが、本当に、それぞれの人生だなあ。
取り上げられたのは、こんな人たち...
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みんな一度は天下をとったわけだから、アマゾンを検索するだけで、いろいろと出てくる。大きな爪痕を残しているなあ。ただ、「コウメ太夫」は単独ものが発見できなかった。この本でも、グダグダぶりが紹介されていたが、一発屋芸人としての遺産を残すという意味でも、グダグダだったのだなあ。
読んでみると、コウメ太夫が芸能界のサラブレッドだったり、苦労人風のテツand トモが意外とすんなり一発を決めていたり、本人たちの印象とは違う人生行路も登場する。また、再起をかけての戦いとしては、ムーディ勝山と天津・木村のバスジャック事件がエグい。身の処し方にも性格が現れる。ムーディ勝山、いい人なんだなあ。
最後は自ら「髭男爵」を語るのだが、山田ルイ53世もなかなか面倒くさい人だなあ。それを自分で書いているところがえらいといえば、えらいけど。ひぐち君でないと、コンビは続けられなかったかも。それは53世も知っているようだが。
ともあれ、人生を感じる1冊。いい家族を持った人は幸せだな、と思う本でもある。それは本人の人徳でもあるのだろうが、心が温かくなる。
最後に、文中で紹介されていた、ジョイマンの高木晋哉の詩集、気になった。こっちも読んでみようか。