山田昌弘「新平等社会」

新平等社会―「希望格差」を超えて

新平等社会―「希望格差」を超えて

 「希望格差社会」の著者による脱「希望格差社会」論。「希望格差社会」のほうは読んでいないのだが、こちらだけ読んでも、その論旨はわかるし、政策提言としても興味深かった。グローバリズム少子化地域格差ニート問題、年金問題など、今の政治アジェンダを縦横無尽に論じる。いまはまさに社会学的アプローチの時代なのだな、と思う。先日、読んだ「五一C白書」は建築計画学の立場から、日本における家族と社会の大変化と、新たな時代のコミュニティ再生へ向けての試みを「住宅」という視点から問題提起していたが、こちらは家族社会学の立場から、日本の社会と家族の変容に政治が対応できなくなっていることを指摘する。まずは社会、家族、個人の現実から出発した議論が必要なのだろうと、たまたま2冊の書籍を続けて読んで思う。
 「新平等社会」でいえば、日本企業の新卒採用主義の是正がひとつのポイントになる。正社員の入り口を新卒という形で固定していることで、「再チャレンジ」が難しい社会になってしまった。企業としても、即戦力思考が強まっているわけで、新卒に固執することは経済的合理性の問題なのか、それとも因習なのか、よくわからないところがある。採用条件として性別・年齢などはすでに差別として規制され始めているわけで、新卒に固定した正社員の採用も規制の対象にするぐらいのことが必要になってくるのだろうか。企業もそれで困るのだろうか?よう分からん。