あこがれ

 フランソワ・トリュフォの短編劇映画処女作ーーと言う知識はあったのだが、初見参。昔の学生映画みたいな雰囲気。実験的とも言えるし、稚拙とも言える。ヒロインがベルナデット・ラフォン(確かに「あこがれ」の対象となる若さと魅力がある)。相手役がジェラール・ブラン。ふたりはクロード・シャブロルの「美しきセルジュ」でも共演していて、「あこがれ」も同じ頃の撮影。シャブロルとトリュフォは「カイエ・デュ・シネマ」で同じグループだったから、ヌーベルバーグの輪の中に、ラフォンも、ブランもいたのだろうか。トリュフォはこのあとの長編処女作「大人は判ってくれない」が素晴らしいが、この「あこがれ」撮影の当時で言うと(映画史的な知識だが)、「美しきセルジュ」(1958年)「いこと同志」(1959年)「二重の鍵」(1959年)を立て続けに発表したシャブロルの力量が圧倒していた。しかし今、ヌーベルバーグとして記憶に残る監督は、ゴダールとトリュフォになってしまう。この差は何なのだろう。シャブロルはあまりにも華麗なテクニックを持っていて、器用過ぎたのだろうか。