薄氷の殺人

 連続バラバラ殺人事件の被害者に関係した女性と、その女性に惹きつけられ、事件を追う元刑事の男を描いた中国映画。予告編を見たときから、そのミステリアスな雰囲気が気になって、興味をひかれていたのだが、ようやく見た。予想していた以上に魅惑的な映画。映像というか、映画文体というか、語り口が変わっていて面白い。ベルリン国際映画祭金熊賞(最優秀作品賞)をとったことがわかる。映画作家としての独自のスタイルをもっている。監督・脚本を担当したディアオ・イーナンの名前は記憶しておいてもいいかもしれない。IMDbなどを見ると、2014年に、この映画を発表して以来、映画はつくっていない様子で、この映画自体、2007年以来7年ぶりの作品だったから、寡作の人らしい。
 映像、ストーリーとともに魅力的なのは俳優陣で、刑事を演じたリャオ・ファンは、この映画でベルリンの銀熊賞(最優秀男優賞)をとったというが、それもわかる。個性的で、ひきつけるものがある。ヒロンを演じたグイ・ルンメイは台湾の女優さんらしいが、主人公の元刑事が心を奪われてしまうのがわかる、かなりの美人で、台湾、香港、中国の映画にいくつも出ている様子。こちらも注目。
 この映画のタイトル、英語では「Black Coal, Thin Ice」。中国語の原題は「白日焰火」で、訳すと「昼間の花火」ということだろうか。中国語、英語のほうが映画の内容に合っている。ともあれ、この映画で描かれる中国の風景や色彩はあまり見たことがないもので、その意味からもおもしろかった。これもまた中国なのかと。