NHK衛星第2で午前中、放映していたのを途中から見る。リンゴ・スターの前任者というか、クビになったドラマー、“ビートルズになれなかった男”ピート・ベストを主役としたビートルズがメジャー・デビューするまでの裏面史。ハンブルグで脱退した5番目のメンバー、スチュワート・サトクリフについても語られる。結局のところ、ブライアン・エプスタインが死に、ポール・マッカートニーが語らない以上、なぜピート・ベストがクビになったかは謎のまま。ホモセクシュアルだったエプスタインがピート・ベストに振られたとか、ジョン、ポール、ジョージがピートの人気に嫉妬したとか、ピートのステージママが邪魔だったからだとか(これは、ピート・ベストが母親と一緒にインタビューを受けたりしているのを見ると、説得力があるが)、諸説あっても、謎は謎。
というか、関係者が(当時の噂を)いろいろ語っても、映像のほうが雄弁で、世界戦略を考えていたエプスタインやEMIにとって、マッシュルーム・カットを拒否して、リーゼントで突っ張るピートは「マーケティング上の問題」だったのだろう。デビュー前からの初期のファンたちは、尖ったところがなくなったと嘆いても、世界マーケティングを考えれば、「大衆化」が必要だったのだろう。で、このポップとロックの微妙なバランスの上で(ポールとジョンの間で)成立したのがビートルズであって、ピートは不要だったのだろう。というか、ポールとジョンのバランスを取るだけで精一杯で、むしろ、ピートという混乱要因よりも、人格円満のリンゴのほうがグループのバランス上、不可欠と“経営者”たちは考えたのだろうな。
それに、クビになったときのインタビューで、ピート・ベストの母親が息子に代わって抗議の発言をし、その母親の翼の下から息子が発言しているのを見るのと、これまたマーケティング上の問題だったのだろうと思う。これではティーンエイジャーの「反抗」のシンボルでもあったロック歌手としてのイメージが崩れてしまう。ピートが母親に弱かったことはイメージ戦略上、問題だったんだろう(誰でも弱いけど、それを人前でも見せるとなるとねえ)。で、リーゼントなんだから、突っ張っているのはカッコだけと、突っ込みが入りそうな…。正しくても、間違っていても、ジョン・レノンみたいに自分の言葉で突っ張らないとねえ。革ジャン、リーゼントをやめさせて、スーツを着せたのと同様、ピートからリンゴへのメンバー入れ替えがブライアン・エプスタインの選択だとすれば、マネージャーとすれば、正しい決断だったのだろうな。
- 作者: ピート・ベスト,パトリック・ドンカスター,中江昌彦
- 出版社/メーカー: CBS・ソニー出版
- 発売日: 1985/07
- メディア: 単行本
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