父親たちの星条旗

硫黄島の星条旗 (文春文庫) クリント・イーストウッド監督の硫黄島2部作の米国編。原作はノンフィクション「硫黄島星条旗」。硫黄島の戦いを戦場写真として有名な星条旗をすり鉢山に立てた海兵隊員のその後と交錯させながら描く。国家は、若者たちを地獄の戦場に送り、そして「英雄」と利用して、2度にわたって踏みつけ、絞り尽くす。イーストウッドは、国家、権力にたいして強烈な不信感を持っている感じがする。草の根主義で、中央集権的な権力を嫌う古典的で、古き良き米国人なのもしれない。ただ、単純な人間ではないけど。この映画でも、単純なカタルシスはつくらないし、単純な正義も悪もつくらない。残酷、凄惨な場面もあるが、一方で抑制もある。つくられた英雄と、どんな人間も持つ英雄的行為を描く。この複雑さは、「ミリオンダラー・ベイビー」「クラッシュ」のポール・ハギスが脚本に加わっていることと無縁ではないのだろう。ドク役のライアン・フィリップと「英雄」の役回りに押しつぶされてしまうアダム・ビーチが良かった。
・映画のオフィシャルサイト
 http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/