ポール・クルーグマン「格差はつくられた」
格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
- 作者: ポールクルーグマン,Paul Krugman,三上義一
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/06/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 176回
- この商品を含むブログ (65件) を見る
ともあれ、米国は、ニューディール、公民権運動に対する評価をめぐり、いまだに対立している。むしろ、いまは保守派が巻き返している。現在、貧富の差が1920年代当時と同じか、それを上回るというのも驚く。1920年代のバブルの原因について、富の偏在は、資金を投機に向かわせ、それが市場の過熱を生んだという説を読んだことがある(有り余ったカネはリスクを無視して、合理性を無視した奔流となり、市場を揺れ動かす)。90年代以降、過熱と崩壊に揺れ動く市場は、富の偏在のなせるワザかもしれない。もう一度、米国の保守派が主導する自由放任主義を見直す時期なのだろう。
で、一方、この本で触れられていないのは、米国の保守派の「小さな政府」論が米国内にとどまらず、世界規模で指示する人が出ているのは、官僚制の腐敗があること。官僚制に対する不信が、この流れを後押ししている。官僚的統治機構の問題についても考えないと、保守派を超えられないだろうなあ。その意味で、米国と英国を比較してみることが必要なんだろうな。レーガノミックスとサッチャリズムは、どこが同じでどこが違ったのか。あるいは、保守でもなく、といって従来型のリベラルとも言えない英国のブレアと米国のクリントンの政治とか研究してみる必要があるんだろうな。ともあれ、米国型資本主義を見直す時期に来ているんだなーーなどなど、いろいろと考えさせられる本だった。