バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』
ウォール街のランダム・ウォーカー <原著第10版>―株式投資の不滅の真理
- 作者: バートン・マルキール,井手正介
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/06/18
- メディア: 単行本
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そうした日本人的な感覚には、むしろ井手正介氏の「訳者あとがきに代えて」が貴重だった。20年間、インデックス投資をしたとしてもパフォーマンスが上がらない日本の現実も交えた、マルキール氏の理論の限界が紹介され、それでも、参考になる部分が具体論とともに紹介されている。この解説だけでも読む価値がある感じだった。
目次で内容を紹介すると...
第1部 株式と価値
第1章 株式投資の二大流派
第2章 市場の狂気
第3章 株価はこうして作られる
第4章 21世紀は巨大なバブルで始まった
第2部 プロ投資家の成績表
第5章 株価分析の二つの手法
第6章 テクニカル戦略は儲かるか
第7章 ファンダメンタル主義者のお手並み拝見
第3部 新しい投資テクノロジー
第8章 新しいジョキング・シューズ−−現代ポートフォリオ理論
第9章 リスクをとってリターンを高める
第10章 行動ファイナンス学派の新たな挑戦
第11章 効率的市場理論に対する攻撃はなぜ的外れなのか
第4章 ウォール街の歩き方の手引き
第12章 インフレと金融資産のリターン
第13章 投資家のライフサイクルと投資戦略
第14章 ウォール街に打ち勝つための三つのアプローチ
2大流派は、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析。筆者はテクニカル分析を罵倒する(というか、それで成功した者がいるのか、と)。最終章の3つのアプローチは、インデックス・ファンド、バリュー投資、モーニングスターなどを利用して成績優秀なファンドマネージャーの投信を選ぶという方法。
全体の感想として、株式投資理論の世界は、マクロ経済学と同じように神学論争とも言っていいような対立した世界観の中にある。片方は、長期的に経済は安定しているといい、その均衡した世界に着目し、片方は、短期的にはバブルや恐慌など経済は大きく変動するものとみて、不安定な世界に茶目する。前者は、バイ・アンド・ホールドが安全、確実だと思い、後者「長期的にはみんな死んでいる」とでもいうように、自分が持つ時間の不確実性を考え、バイ・アンド・トレードこそが安全だと思う。どちらにも一理あるが、日本のような環境にいると、どうも後者の思想に与したくなる。