ノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が感謝しているのは日亜化学工業の創業者、小川信雄氏。会社ではなく?

 青色発光ダイオードノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が「誰に一番感謝していますか」と聞かれた答えは...

 「小川信雄会長。最高のベンチャー企業家だ。次に、カリフォルニア大サンタバーバラ校(UCSB)のヘンリー・ヤン(楊祖佑)学長。彼が一番支援してくれた」

 日亜化学工業の創業者で社長、会長を務めた小川信雄氏*1。開発にあたって、こんな経緯も語られている。

会社(日亜化学工業)に入ったときには赤色LEDだけを扱っていて、売り上げもよくなかった。会社の人には赤色LEDを推されていた。いつまでたっても売り上げがよくならなかったので怒った。(日亜化学創業者の小川信雄)会長に『青色LEDを作りたい』と言ったら、『いいよ』とお金も出してくれた。海外に行ったこともなかったので『1年間留学したい』といったら、それも『いいよ』と。たった5秒の会話だった。米フロリダ州の大学に留学した。

 ベンチャー精神に富んだ経営者だったのだな。中村氏が日亜化学工業を相手に発明対価訴訟に踏み切るのは、経営者が小川信雄氏から代わってから。次の社長にベンチャー精神はなかったのだなあ。で、小川信雄氏に関する本がないかと、アマゾンでみてみたら...。

父一代の日亜化学―青色発光ダイオード開発者中村修二を追い出したのは誰だ!

父一代の日亜化学―青色発光ダイオード開発者中村修二を追い出したのは誰だ!

 うーん。本当に、いろいろとあった感じだなあ。この本の著者は信雄氏の実子で、日亜化学工業の後継社長は小川姓でも女婿だったらしいから、その点、多少、割り引いて読んだほうがいいのかもしれないが、ともあれ、中村氏が会社を相手に訴訟を起こし、日本国籍を捨て米国籍になるぐらいの複雑な事情があったのかもしれないなあ。メディアも今は賞賛するが、訴訟の時はカネの亡者扱いしていたところもあったし、ある種、オールジャパン村八分的な雰囲気もあったような...。実際、安倍政権も、社員の発明は会社のものを法制化しようとしているようだし...。
 円安になっても輸出が回復しないことが国会でも議論になっていたが、海外生産が進んだという話だけでなく、異能排除・管理強化の日本の製造業のイノベーション力、そして経営者の劣化が原因なのかもしれないなあ。中村修二氏をめぐる物語を改めて思い起こすと、そんな感じがしてくる。日本人のノーベル賞受賞を喜ぶと同時に、アニマル・スピリットを失った日本の企業風土を反省したほうがいいのかもなあ。ヘイトスピーチが話題になる遥か前に、街から外国人(当時はアジア・中東系)を排除しようと追い回しているような国に未来はない、といっていた理系の経営者がいたけど、今の日本を見ていると、その話を思い出すなあ。

*1:ウィキペディアで「小川信雄」を見ると => 小川信雄 (実業家) - Wikipedia