オバマ大統領は米国の亀裂を深めたのか? 青(民主党)と赤(共和党)に分裂した国はいまだに...

 米国は青い州民主党)と赤い州共和党)の寄せ集めではない−−といったのはオバマ大統領だったけど*1オバマにとって青と赤の融和は前途多難のようだ。

オバマ米大統領は米近代史上、民主・共和両党からの支持率の差が最も大きな大統領の一人であることが、米世論調査会社ギャラップの最新の分析で明らかになった。ギャラップが6日に発表した報告によると、オバマ氏の在任6年目の今年、民主党支持者からの支持率が平均で79%だったのに対し、共和党支持者からの支持率はわずか9%だった。この70%という支持率の差は、過去60年で5位タイの大きさだ。

 トップ10というのか、ワースト10というのか、1953年以降の支持率格差ランキングで、10のういち4つはジョージ・W・ブッシュ。こちらは共和党が支持で、民主党が拒否なんだろう。そうしたなかで、オバマの「青い州赤い州」発言が出てきたのだろうが、そのオバマ自身は残りの6つ全部。要するに、在任期間を通じて、青い州赤い州に分かれっぱなしで、亀裂の解消には貢献できていないこと。
生声CD付き [対訳] オバマ大統領就任演説 共和党支持者にだって大統領就任時の期待は大きかっただろうし、一方で共和党にはもともと保守派が多いから、人種的な問題もそれなりに影響しているのかもしれない。でも、それ以上に、あまりにも政治的というか、政治屋的な手法に原因があるようにも思えてしまう。めちゃくちゃ選挙が上手な人で、当選確率を計算して、民主党支持層受けしそうな政策をマーケティング的に打ち出している感じがどこかに漂う。民主党票を確実に取りに行った結果、思いっきり共和党支持票が減ることになるのだな。もともと確信犯的に取捨選択しているところもあるんだろうけど。この戦術は、ある意味、ブッシュの手法を真似しているともいえるから、民主、共和、どっちもどっちだけど。ただ、ブッシュの場合、それでも好きか嫌いかは別にして(私はどちらかというと、嫌いだけど)、その言動の裏には信念があったような気がする。一方、オバマは計算と打算というところがどうも...。
 オバマの最大の問題は、自分の信念が見えないところかもしれない。昔の比喩で言うと、富士山型。遠くから見ると、美しいが、近くに行くと、岩ばかりの上、ゴミが目立つとか...。いずれにせよ、どんな手段を使っても選挙に買って、権力を握るというのは政治家として許されるとして、そうした獲得した権力で何をしたいのかが見えてこない。言葉ではいろいろと言うけど、本当に何をしたいのか。何のために権力を使いたいのか。言葉に行動が伴わず、言葉が信用されなくなり、言葉の力が失われれば、外交でも影響力が低下していくだろう。実際、米国を試すかのように、現在の秩序に不満を持つ国家やテロ組織が蠢いている。米国内の亀裂も問題だが、世界も重石を失って、鳴動している感じがする。
 大統領としての仕事をする前に演説だけでノーベル平和賞まで取ってしまったり、期待度120%ぐらいで発進したオバマだけど、大統領としての実績は何だったのだろう。そして、残り2年、本当は何をしたいのだろう。オバマ民主党の8年の後、米国民は次の大統領に誰を選ぶのだろう。中東、ウクライナが火を噴き始めている現在、時期が時期だけに国際社会に与える影響も大きいなあ。

Duty: Memoirs of a Secretary at War

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・ブッシュ、オバマ両政権で国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏の回顧録。オバマ大統領に厳しい。
Worthy Fights: A Memoir of Leadership in War and Peace

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・ゲーツ氏の後任のレオン・パネッタ国防長官の回想録。やはりオバマ大統領に批判的だとか。
Hard Choices (English Edition)

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クリントン前・国務長官の回想録。こちらは3月に邦訳『困難な選択』が日本経済新聞社から出版されるみたい