「俺たちに明日はない」のアーサー・ペンが死去
「俺たちに明日はない」などの作品で知られた映画監督のアーサー・ペン氏が28日夜、うっ血性心不全のためニューヨーク・マンハッタンの自宅で死去した。88歳。米メディアが報じた。代表作である同作品はアメリカン・ニューシネマの先駆けとなった。1922年、フィラデルフィア生まれ。50年代にテレビドラマ、60年代にブロードウェーで活躍。大恐慌の30年代に銀行強盗を繰り返すカップルを描いた「俺たちに明日はない」(67年)は、壮絶な銃撃シーンや斬新な性的描写で大きな話題を呼び、「タクシードライバー」など70年代の米映画にも大きな影響を与えた。
「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde)の監督で、アメリカン・ニューシネマの先駆者だったアーサー・ペンが死去。ブロードウェイからハリウッドに進出した監督だっただけに、ニューヨーク・タイムズ(電子版)も大きく扱っている。その書き出しはこんな感じ。
Arthur Penn, the stage, television and motion picture director whose revolutionary treatment of sex and violence in the 1967 film "Bonnie and Clyde" transformed the American film industry, died on Tuesday night at his home in Manhattan, the day after he turned 88.
やっぱり、まず挙げるのは「Bonnie and Clyde」、つまり「俺たちに明日はない」。禁欲主義のピューリタン的タテマエの下に抑圧されてきた米国映画産業の検閲システムに風穴を開け、暴力・セックスに関する表現の枠を広げた。後世への影響は良い面、悪い面、両面あったかもしれないが、これを機に米国映画は芸術的にも興行的にもエネルギーを爆発させる。
共同通信の訃報では、マーティン・スコセッシの「タクシー・ドライバー」がとりあげられているが、「ワイルドバンチ」以降のサム・ペキンパーの映画も、この映画がなければ、難しかっただろう。ヌーベルバークがゴダールの「勝手にしやがれ」を抜きに語れないように、米国映画の新たな潮流の源泉は「俺たちに明日はない」にあるといって過言ではない。
で、アーサー・ペンの映画というと...。初期の作品では、やはり、これ、「奇跡の人」。
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この後、マーロン・ブランド、ジェーン・フォンダ、そして、まだ駆け出し時代のロバート・レッドフォードが出てくる「逃亡地帯」を経て、傑作「俺たちに明日はない」の登場になる。
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で、この作品を映画史で不動のものとしたのは、ラストの銃撃シーンだった。
残酷にして美しく哀しい、この「死の舞踏」は良くも悪しくも、その後の映画に大きな影響を及ぼした。美を進化させた映画もあれば、ただ残虐さのみを追求した映画も生んだ。まあ、後者のほうが多かったかも知れないが...。
しかし、この作品があまりにも鮮烈で、絶大な評価を受けたために、アーサー・ペンはこれ以降、作品に苦しんだように見える。この次の「アリスのレストラン」など、アメリカン・ニューシネマの監督でならなければならないという重圧で、つぶれてしまったような映画に見える。「反体制、反戦・平和、自由=ラブ・アンド・ピース=ヒッピー」みたいなところにがんじがらめになったような...。
で、「俺たちに明日はない」以降の後期作品群から選ぶと、個人的には次の2本。
まず「小さな巨人」
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もう1本は「ナイトムーブス」
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ともあれ、偉大な監督でした。合掌。
【参考】
★ウィキペディアで見ると
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★Googleで検索すると
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