米国の社会派映画監督のシドニー・ルメットが死去。3本選ぶとすると、このあたりか

米映画界を代表する映画監督のシドニー・ルメット氏が9日、ニューヨークの自宅で死去した。86歳だった。家族がCNNに語ったところによると、死因は非ホジキンリンパ腫による合併症。同日午前3時40分、家族に看取られて死去したという。代表作は、米映画史上屈指の名作とされる「12人の怒れる男」(1957年)。このほか、「ネットワーク」(76年)、「セルピコ」(73年)、「狼たちの午後」(75年)、「評決」(82年)などの社会派作品で知られる。

 米国を代表する社会派の映画監督、シドニー・ルメットが死去。社会の差別や権力の腐敗を告発するシリアスな映画が多かった。暗めだったけど、エンターテイメントになっていた。独断で3本を選ぶと、まずは何と言っても、この映画。

12人の怒れる男 [DVD] 12人の優しい日本人 [DVD] 陪審員裁判を描いた「12人の怒れる男」。民主主義とは何かを描いた教科書のようなドラマ。ヘンリー・フォンダが米国の良心を代表していた。一方で、たったひとりになっても、正義を貫く難しさを描いているともいえる内容。ドラマとしてよく出来ているので、三谷幸喜の戯曲を映画化した「12人の優しい日本人」とか、ロシアのニキータ・ミハルコフ監督の「12人の怒れる男」(同じタイトルなので、ややこしい)とか、この作品から派生してきた陪審員裁判映画がある。
 ルメットは、アル・パチーノが主演した映画に名作が目立つ。「セルピコ」と「狼たちの午後」−−どちから、選ぶとすると、こちらか。
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 「狼たちの午後」。みんなは「セルピコ」を代表作とするんだろうが、個人的には、こっち。アル・パチーノも良かったが、ジョン・カザールが何よりも良かった。頼りなくて、哀しげで...。「セルピコ」は暗かったという印象がある。ルメットは「セルピコ」のほかにも「プリンス・オブ・シティ」「NY検事局」とか警察内部の腐敗を告発する人間の苦悩を描いた映画をいくつも作っている。このジャンルを確立したのはルメットといえるのかもしれない。
 で、最後の1本は悩むところ。記事にも出ている「ネットワーク」はテレビ・メディアの問題を暴いた映画。「評決」は司法制度。偶発核戦争の恐怖を描いた「未知への飛行」(フェイルセイフ)という映画もあったなあ。こうして見ていくと、ルメットの作品群を1本貫いていたのは反権力であり、倫理であり、人間としての良心だったのだろうなあ。ニューヨーク・タイムズは追悼記事に「A Director of Classics, Focused on Conscience」というタイトルを付けている。
 でも、最後の1本はこちらだな。
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 アガサ・クリスティのポワロ物の名作をオールスターで映画化した「オリエント急行殺人事件」。これは生粋のエンターテイメントだった。こういう映画も撮れるんだぞ、と見せた感じだが、こっちへ方向転換しなかった。「オリエント急行」の大ヒットをきっかけにポワロは復活したのだが、続編の監督はやらなかった。やはり作りたかったのは、現代社会の問題を描くことだったんだろう。
★Sidney Lumet, Director of ‘Serpico,’ Dies at 86 - NYTimes.com => http://t.co/MAuaVcZ
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