村上春樹『使いみちのない風景』

使いみちのない風景 (中公文庫)

使いみちのない風景 (中公文庫)

 稲越功一の写真とコラボした村上春樹のエッセイ集。収録されているのは「使いみちのない風景」「ギリシャの島の達人カフェ」「猫との旅」の3編。「使いみちのない風景」は、鮮烈な印象を残しながら、物語に発展していかない記憶。アントニオ・カルロス・ジョビンの「Useless Landscape」という曲からタイトルをとったというが、村上春樹は、こうしたところが洒落ている。
 「猫との旅」の中で語る村上春樹が愛する猫に関する一節が印象に残った。

 どうして猫が旅行嫌いなのかというのはむずかしい問題であるが、僕はそれはたぶん猫が限定された世界観の中でしか生きていけないからではないかと考えている。要するに猫というのは極めて厳格な個人業者であって、自分の手のとどく範囲のことにしか興味がないのである。だからきっと見聞を広める必要もないのだ。

 ある種の人間のことを言っているようにも聞こえてくる。
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