大鹿靖明『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』
- 作者: 大鹿靖明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/28
- メディア: 単行本
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次々と知らない事実が出てくるところはもちろん、当時のニュースなどで断片的に知っている事実が原発事故の文脈の中に位置づけられ、その意味が明白になるところがなかなか刺激的だった。しかし、これを読んでいると、日本の「ベスト・アンド・ブライテスト」たちの荒廃ぶりに暗澹たる気持ちになる。結局のところ、あれだけの惨事が引き起こし、いまも災危を振りまきながら、エリートたちが誰も傷ついていない。経産省の幹部は割増退職金をもらって勇退し、原子力安全委員会の斑目委員長にしても、東京電力の勝俣会長にしても、今もその座にある。すごいなあ。1年経って、みんな事故のことは忘れると期待しているのだろうか。
震災から半年ぐらい経った頃、民主党の某議員が、菅首相でなかったら、日本は崩壊していたと言っていたが、この本を読むと、そうかもしれないと思う。性格や言動に難点がありながらも、菅首相の意志と行動が事故への対応を動かしたところがある。この本でも感じるが、東電、経産省や原発のプロといわれている人たちに任せておいたら、どうなっていたかを考えるほうがはるかに恐ろしい(少なくとも首相には当事者意識があった)。昨年の3月11日に、第一に福島第1原発の所長が現場派の吉田所長であったこと、第二に菅首相であったことは不幸中の幸いだったと、この本を読んでいると思う。安部首相だったら、福田首相だったら、麻生首相だったら、鳩山首相だったら...と考えると、ちょっと恐ろしい。所長が現場派の人でなかったら、これはもっと恐ろしい。
それと、この本を読んでいると、『官報複合体』ではないが、官僚や大企業が報道を誘導していく姿も出てくる。『日本中枢の崩壊』『官報複合体』と連なる本ともいえそう。あ、みんな講談社か。