her/世界でひとつの彼女

 離婚調停中の孤独な男がスマホ人工知能型OSに恋をしてしまう。監督が「マルコビッチの穴」「アダプテーション」のスパイク・ジョーンズで、俳優がホアキン・フェニックスエイミー・アダムスルーニー・マーラスマホの声がスカーレット・ヨハンセン。さらにアカデミー脚本賞受賞作ということで期待して見たのだが...。うーん。ちょっと違った。
 着想は奇抜だし、映像も斬新。無機質な大都市の風景が美しい。映画の中で登場する3次元ゲームのキャラクターもよく出来ている。スカーレット・ヨハンセンは声だけで映画を支配するほど魅力的だし、ホアキン・フェニックスはその声との二人芝居というか、一人芝居を演じきっている。でも、何か一つ足りない感じが残る。加えて長い。
エターナル・サンシャイン [Blu-ray]マルコヴィッチの穴 [Blu-ray]「マルコビッチの穴」と何が違うのかと思ったら、脚本家だった。「マルコビッチの穴」「アダプテーション」のシナリオを書いたのは、チャーリー・カウフマンだった。「エターナル・サンシャイン」もスパイク・ジョーンズの作品と思い込んでいたのだが、これは脚本がチャーリー・カウフマンで、監督はミシェル・ゴンドリーだった。奇想天外な設定の中から人間の哀しさ、愛おしさ、切なさを描き出していくのが、一連の映画の素晴らしさだったのが、この世界を創りだしていたのはチャーリー・カウフマンだったことを改めて実感する。
 それが映画を見ながら、感じていて違和感だったのだ。冗長になってしまったのも、スパイク・ジョーンズチャーリー・カウフマンシナリオライターとしての技量の差なのかもしれない。「エターナル・サンシャイン」の上映時間は107分で、「her」は120分かあ。スマホに恋するという着想は現代的で面白いが、完成度から言うと、うーん、これでアカデミー脚本賞か...という印象も残る。「エターナル・サンシャイン」で、チャーリー・カウフマンがアカデミー脚本賞をとったのは当然と思うけど、こちらの場合は...うーん。
 ともあれ、期待が高かった分、ちょっと...という印象が残ってしまった。期待値が低かったら、もっと楽しめていたかもしれない。