インクスが倒産してしまった

インクス(本社東京)は,2009年2月25日に東京地方裁判所民事再生法の適用を申請したことを明らかにした。主要な顧客先である自動車業界からの受注が急速に減小したためだという。今後は,コンサルティング事業を中心とした組織体制に刷新するとともに,経費削減などに取り組むことで再建を目指すという。

 最先端の金型製造技術を持つ21世紀型企業といわれ、理工系の大学生の人気も高かった、あのインクスが・・・。倒産してしまった。どこに誤算があったのだろう。いくら自動車産業が危機的状況にあると言っても・・・。それほど急激な市場縮小なのか。しかし、その割に、きちんと取り上げているメディアが少ない気もする。どこか詳細な記事を書いてくれないだろうか。本当に「製造業の崩壊」だなあ。

鳥居民『近衛文麿「黙」して死す』

近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任

近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任

 近衛文麿はなぜ自殺したのか? 近衛は何を守ろうとしたのか? 太平洋戦争の開戦の責任は誰にあるのか? 木戸幸一近衛文麿の対立とは? 東条内閣を誕生させた木戸内大臣の責任は? 木戸、都留重人ハーバート・ノーマンをつなぐものは何か?ーーなどなど、ともかく面白い。ただ、面白いのだが、近衛や木戸の心の中にまで入って代弁する、読んでいて、これが歴史的事実にもとづく記述なのか、推論なのか、それとも著者の空想的創作なのかがわからなくなる。資料なり、取材なりで、論証されているものか、状況証拠による論告なのか? 状況証拠だけで物証はなくても、著者の論述は説得力はあり、面白いが。
 で、結論としては、開戦責任は、日米交渉を中国からの撤兵で打開しようとして陸軍の壁に破れた近衛にあるのではなく、内大臣として、なすべきことをなさず、昭和16年10月に、近衛ではなく、東条を選んだ木戸にあるという。そして戦後は、天皇退位をも視野に入れた近衛と、昭和天皇を守ろうとする木戸と対立が続く。しかし、ふたりに対立はあったとしても、その背後で戦争への流れをつくっていくのは、陸軍内部の派閥抗争(それは皇道派に近い近衛と統制派に近い木戸の対立にもつながる)であったり、陸軍と海軍の省益争い(ありていにいえば、予算獲得競争と権限争い)であったりする。何だか哀しい話ではある。226事件を制圧した木戸は陸軍の統制派に近かった。それが昭和16年の運命の年の首相に東条を選択させたといわれると、なるほどと思う。少しずつ少しずつ狂って、抜き差しならないところに追い詰められていくんだなあ。日本って哀しいなあ。
 でも、組織があれば、派閥抗争はつきもので、これは日本だけの話ではなさそう。米国は米国で日本占領をめぐって右派と左派の戦いがあり、それがみんなの運命を狂わせていく。その流れ次第では、自殺していたのは木戸だったのかもしれない。しかし、この本を読んで、ハーバート・ノーマンに対する印象が変わってしまった。本当はどんな思想を持った人間だったのか、ノーマンの本もきちんと読んでみてみるか。

米シティが、事実上の政府管理銀行に

米金融大手シティグループは27日、政府の所有する優先株普通株に転換することで政府と合意した、と発表した。政府は持ち株比率が約36%の筆頭株主になる見通しで、シティは事実上、「公的管理」に入ることになる。シティは08年10〜12月期決算まで5四半期続けて純損失を計上。この間の損失額は米金融大手で群を抜く規模だったが、損失計上の増加に歯止めがかかる気配はない。昨年2度にわたって計450億ドル(約4兆4千億円)の公的資金を注入されたのに加え、2度目の注入の際には米政府から最大約2350億ドル(約23兆円)の損失保証も受けた。ところが今月に入って再び投資家の不安が強まり、株価は一時、1ドル台まで急落。3度目の「救済」は避けられないと見られていた。

 バブル崩壊後の金融危機の極限から再生していく過程では、信用を保持するために一度、銀行を政府の管理下に置く必要があるんだろうなあ。日本も同じ過程を通ってきたわけだし。シティがそこまで行ってしまうのはすごいと思うけど、再生への過程なんだだろうなあ。