the fog of war

 監督:エロール・モリス
 音楽:フィリップ・グラス
 ケネディ、ジョンソン政権時代の国防長官、ロバート・マクナマラが自らの半生を語る「私の履歴書」的ドキュメンタリー映画
 ベトナム戦争の意思決定過程だけではなく、東京大空襲*1、フォード自動車のマーケティング経営*2キューバ危機の内幕が語られる。実際の会議、電話、通信の録音テープが使われており、その会話が生々しい。戦争の霧の中で、キューバ危機が核戦争寸前で回避されたのも、トンキン湾事件による北爆の開始にしても、戦争も平和も紙一重という感じがする。東京大空襲の指揮官、ルメイは「戦争に負けたら、俺たちは戦争犯罪人だ」と言っていたという。英雄か、戦争犯罪人か、倫理も霧の中にある。
 マクナマラ「ベスト・アンド・ブライテスト」のひとりで、神童として知られていたが、このインタビューでも、大学の学費や初任給の金額をしっかり覚えていたり、細かな数字を鮮明に覚えているのを見ると、アタマのいい人なんだなあ、と改めて思う。
 マイケル・ムーアの「華氏911」のようなエンターテイメント性はなく、淡々と語られていくが、現実はもっと混沌として複雑なものと、考えさせられる。
 邦題は「フォッグ・オブ・ウォーマクナマラ元国防長官の告白」
 原題は、The Fog of War:Eleven Lessons from the Life of Robert S. McNamara*3
 ロバート・マクナマラの人生から得た11の教訓。その教訓とは…

  1. 敵の身になって考えよ*4
  2. 理性は助けにはならない*5
  3. 自己を越えた何かのために
  4. 効率を最大限に高めよ
  5. 戦争にも目的と手段の「釣り合い」が必要だ*6
  6. データを集めろ*7
  7. 目に見えた事実が正しいとは限らない
  8. 理由付けを再検証せよ
  9. 人は善をなさんとして悪をなす
  10. 「決して」とは決して言うな*8
  11. 人間の本質は変えられない

 米国の「the fog of war」オフィシャルサイト
 http://www.sonyclassics.com/fogofwar/
 映画データベース;IMDb
 http://www.imdb.com/title/tt0317910/

*1:第2次大戦中は、戦略爆撃の評価を担当してた

*2:マクナマラはフォードの社長からケネディ政権入りした

*3:ミドルネームの「S」は「Strange」だという

*4:キューバ危機の回避は、ソ連の身になって考えたから

*5:ケネディも、フルシチョフも、カストロも理性的な人間だったが、キューバ危機では核戦争寸前まで行った。戦争を回避できたのは、理性ではなく運だった

*6:東京大空襲などの焦土作戦と広島、長崎の原爆投下は必要だったのか

*7:フォード経営成功の要因

*8:Never Say Never