「ディア・ハンター」The Deer Hunter

ディア・ハンター [DVD]

　wowowで放映していた。マイケル・チミノ監督の出世作。主演は一応、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープだが、これはクリストファー・ウォーケンの映画。最近は見るからに行ってしまっている狂気の人の役が多いが、この映画では繊細な青年。その繊細さゆえに、戦場の異常さの中で人格が壊れていく。ベトコン（民族解放戦線）の描き方などに問題があると批判されたが、あくまで映画というフィクションの世界の話で、主人公たちが遭遇する戦争の狂気、理不尽な暴力の象徴としては卓抜な表現だった。
　最後に鎮魂歌として歌われる「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、９・１１以降は愛国歌になってしまった（それが本来の「ゴッド・ブレス・アメリカ」か）。そのあたりを見ていても、米国がベトナム戦争後の内省の時代が終わり、新たな時代に入っているのだなあ、という思いを深くする。この映画、1978年の作品。四半世紀を経ると、時代の雰囲気は変わってしまう。
　IMDbの作品紹介=> http://www.imdb.com/title/tt0077416/