ピカソ展 躰とエロス@東京都現代美術館

パブロ・ピカソ (タッシェン・ジャンボシリーズ) 東京都現代美術館で、パリ・国立ピカソ美術館所蔵の「ピカソ展 躰とエロス」を見る。ピカソの作品をまとめてみたのは初めて。1920年代から30年代の作品が中心だが、ピカソはまさに「20世紀的人間」。人間らしい人間としての天才だと感じる。
 ピカソは「わたしは自伝を書くように絵を描く。わたしの画布は日記の1ページである…」と言っていたという。その通り、展示されている絵や造形物を見ていると、その時代に生きてきた人間のすべてが表出している。美と醜、浜辺の健康的な明るさと街頭の暴力、愛と性が交錯する。そのすべてが、ひとりの人間の中にある。
ピカソ NBS-J (タッシェン・ニューベーシックアートシリーズ) 1階の展示物のピカソが明ならば、地下のピカソは暗。純粋な美の追求、太陽と健康に対して夜、血、暴力、そして性。そのすべてが人間であり、ピカソになる。1920年代は第1次大戦後の開放感と空前の好況の時代。30年代は大恐慌と革命、ファシズム、収容所、内戦、戦争の時代。そのなかで、ピカソはどう感じていたのか。「ゲルニカ」のピカソも真実ならば、美しく若い愛人からインスピレーションを得ていたのもピカソ。人間はそんな矛盾に満ちた存在だ。良いカッコをすることもなく、そのすべてがさらけ出されている。その生命力、人間そのものを表現する、その力に心を動かされるのだと思った。
ピカソ、ザ・ヒーロー ピカソほど、20世紀的な人間はいないだろう。戦争も革命も享楽も平和も何もかも飲み込んで生き抜いた。展示の最後は、ピカソ・グッズの販売コーナー。ピカソ消しゴム、ピカソ・Tシャツ、ピカソ・鉛筆などなど。すべて売り物。美術館を出ると、近くの「美術館通り」といわれる商店街には「ピカソ通り」の幟が林立していた。資本主義も、商業主義も、市場経済も何もかもピカソは飲み込んでいく。人間って言うのはすごい。それをまるごとつかんで、その本質を表現したピカソは本当にすごい。だから、こんなに、みんなが惹かれるのか−−てな感じで、絵画的素養のないボクは何やら感心しながら帰路についた。
 東京都現代美術館=> http://www.mot-art-museum.jp/top.htm
 ピカソ展 躰とエロス=> http://www.p-forme.jp/
☆画像は、ピカソ関連書籍の表紙のきれいなものを選んだもので、このピカソ展に関係の深い本というわけではありません。見た目です。見た目。