瀬木慎一「ピカソ」

ピカソ (集英社新書)

ピカソ (集英社新書)

 ピカソと親交のあった瀬木慎一氏によるピカソの芸術と彼を取り巻いた女性たちの物語。ピカソの生命力はすさまじい。そして、その生命力に接してしまった者はもはや普通の生活に戻れないのか。ピカソを生活をともにした女性のうち2人が自殺している。
 ピカソは、日記のように絵を描いたと言うが、瀬木氏の本の中にも、こんな記述があった。

 面倒なのか、忘れたのか、作者(ピカソ)がサインを入れないままの作品が世に出ることもあった。しかし、その種の絵にもほとんど必ず、裏面に制作年月日などが書かれていて、律儀だった。日付けは画面中にもしばしばあり、小画面のデッサンにも見られて、この画家の「時」の感覚に対する執念を私たちに伝える。つまり、ピカソは絵を自分の生活の記録あるいは生きることの痕跡として書いたと見ることができる。

 生きることは描くことだったのだろう。作品のひとつひとつの生命力を思うと、ピカソの生命の強さを改めて感じる。もう一度、東京都現代美術館に見に行こうか、と思ってしまう。