ガルブレイス「悪意なき欺瞞」

悪意なき欺瞞

悪意なき欺瞞

 <私利私欲の飽くなき追求を旨とする企業システムの支配、これこそが21世紀の基本的な事実なのである>とか、<「資本主義」という悪名を追放しようとするのなら、それに代わる適切な名称は「企業官僚主義」のはずである>とか、なるほどと思う指摘があるし、ブッシュ政権で露骨になってきた軍産複合体の問題なども頷ける。
 現在の政治・経済体制批判のラッシュ。ただ、時評に近いエッセイで、特に新しい事実やデータを検証しての論説ではないだけに、読んでいくうちに、硬骨漢のオールド・リベラリストの繰り言のようにも思えてくる。今が我慢できないという感じは伝わってくるが、何だか年寄り臭い感じがしてしまうのは、なぜだろう。ガルブレイス・ファンのボクとすれば、「やってる、やってる」という感じだが、それでも途中から、う〜ん、という感じ。ファンには訴えても、「悪意なき欺瞞」の世界に安住してしまっている人々の考えを変えるところまではいかないように思える。何だか、今度の米大統領選みたいで、民主党共和党がはっきりと分かれ、お互いの世界に沈んでいってしまっているようにも思える。