アート・スピーゲルマン「マウス」

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語

 副題に「アウシュビッツを生きのびた父親の物語」。ナチス・ドイツの時代を生き抜いたポーランドユダヤ人の父親の物語をコミックで描いた、いわゆる「グラフィック文学」。2冊セットで、これは、その第1巻。ポーランドナチスの手を逃れようとして悪戦苦闘するが、最後はナチスに捕まり、アウシュビッツに送られるまで。息子が父親の思い出話を聞きながら、ユダヤ人迫害の歴史を記録していくのだが、父親の良いところ、嫌な面も正直に描いていく。重い話だし、コミックであることで読みやすくなっている。ただ、その一方で、ユダヤ人をネズミ、ドイツ人をネコ、ポーランド人をブタと描くのは、そこに既に価値判断が入り、類型化しすぎではないかと思える(特に迫害された身になれば、そうみえるのかもしれないが、ポーランド人みんなをブタとするのは…)。2巻も読んでみようかと思う。