グーグルはビッグブラザーの補助エンジン化を避けられるか?

米司法省が米グーグルに対し、個人の検索情報などの提供を求めていることが明らかになった。18日にはグーグルに情報提供を命じるようカリフォルニア州サンノゼ連邦地裁に訴えを起こした。

 グーグルが司法省の要請に応じたら、政府の思想検閲機関に堕してしまう恐れがある。検索エンジンを通じて、個人を監視する体制をつくる手助けをすることにもなってしまう。ジョージ・オーウェルが「1984年」で描いたビッグブラザーの世界よりも、もっと恐ろしい世界かもしれない。個人の自由はオンラインになく、電子的にトレースされないオフラインの世界(本)がラストリゾートとして残るのだろうか。そうなると、レイ・ブラッドベリーの「華氏451度」のように、政府は本を焼き尽くしてしまうのだろうか。まあ、ビジネスとしても、もし司法省に協力すれば、グーグルを検索エンジンとして利用しない人も増えてくるだろう。米国では、このニュースをきっかけにグーグル株が売られたらしいが、それもわかる。グーグルは当然、抵抗しているが、応じることに追い込まれれば、検索エンジンオープンソースで開発していこうとする動きに拍車がかかるのだろうな。
 政府がグーグルに対して訴訟を起こしているが、今回の裁判、ペンタゴン・ペーパーズ(国防総省ベトナム戦争秘密報告書)の報道差し止めを求める政府とニューヨークタイムズの法廷闘争に匹敵する、思想・言論の自由に関する歴史的な戦いといえそうだ。ニューヨーク・タイムズの勝訴が、ウォーターゲート事件報道など、その後の米国ジャーナリズムの黄金時代を生み出した。グーグルの情報提供をめぐる司法判断は、ネットとメディアの今後の流れを決めることになるのだろう。