山本七平「日本はなぜ敗れるのか−−敗因21カ条」

虜人日記 (ちくま学芸文庫) 山本七平が、小松真一の「虜人日記」をもとに語る日本人論。小松氏は山本氏同様、フィリピンで捕虜になった人物で、戦争直後に、この日記をまとめた。読んでいて思うのは、小松氏が敗因としてあげた要因が、永野護の「敗戦真相記」、吉田満の「戦艦大和ノ最期」という、いずれも敗戦直後に書かれた記録と同じであること。そして、愕然とするのは、山本氏が指摘しているように、「虜人日記」で描かれている日本軍の様相が、いまの会社で見る風景と驚くまでに変わらないこと。日本人の集団、日本人の組織の体質は何も変わっていない。山本七平が、この文章を書いたのは戦後20年の1975年から1976年。それから、もう30年。その間にバブルが発生し、その崩壊があり、そして、また復活と、日本システムは一度死んで、生まれ変わったかのように見えるのだが、根っこのところは変わらない。大体、1945年の日本軍の行動は、西南戦争西郷隆盛の行動と変わらないというのだから、これはもう本当に日本の組織のDNAなんだなあ。たまたま読み始めたのだが、教訓の多い本。