R.P.ファインマン「ご冗談でしょう、ファインマンさん」(上)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

 ノーベル賞物理学者、ファイマン氏の自伝。面白い。米国の青春的な風景もある。マンハッタン計画に参加しており、現場から見た原爆開発の状況も描写されている。マンハッタン計画では、コンピューターが利用されるのだが、この生みの親がコンピュータにはまってしまう。

 このシステムの生みの親たるフランケル氏は、コンピュータをいじったものなら誰でも知っている、いわゆるコンピュータ病にかかってしまった。この病気はなかなかの難病で、仕事に非常にさしさわりがでてくる。コンピュータで困ることは、これを使ってついつい遊んでしまうことである。

 コンピュータが生まれた昔から、そうだったのだなあ。
 ファインマンマンハッタン計画の最中に、最初の夫人を失っているのだが、そのなかに、こんな一節がある。

 (アーリーン夫人が亡くなったときは)涙も出てこなかった。ほんとうに涙がこぼれたのは、何カ月も経ってからのことだ。オークリッジのデパートの前を通って、ふとショーウィンドウの中のドレスを見つけ、ああアーリーンの好きそうな服だなと思った瞬間だった、悲しみの波が一挙に押しよせてきたのは。

 涙はそういうものだ。