奥田英朗「サウスバウンド」
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/06/30
- メディア: 単行本
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結局、奥田英朗はトリックスターが好きなのだろうか。主人公の父親など、過激派の残党というよりも、かなりの勘違い・嫌みオヤジだと思うのだが、むしろ、こうしたトンデモナサ、非常識を奥田氏は愛しているのかも。でも、キャラクターとして全共闘なり、過激派を扱うのはなあ。最初からコメディならば、まだわかるけど、それでシリアスさを演出しようとすると、何となくあざといというか何というか。深みも何もないから。仲間を殺すという世界にはまりこんでしまう狂気も。
ただ、それでも読んでしまうところはストーリーテリングのうまさなのかも知れない。奥田という人は、ゲームのようにストーリーを組み立てる人なのだろう。キャラクター小説といってもいいのかもしれない。ただ、キャラクターがリアルな世界と言うよりも、テレビ的な世界の類型で成り立っているからか、小中学生の描き方にしても、西表島をユートピアとして描くのも、ステレオタイプともいえる。ストーリーテラーではあるんだけど、人間を深く考える人ではないのかも知れない。