佐藤優「自壊する帝国」

自壊する帝国

自壊する帝国

 「国家の罠」も面白かったけど、ソ連崩壊を描いた「自壊する帝国」はそれ以上に刺激に満ちている。ソ連崩壊を人間から描いたルポルタージュであり、ロシア論にもなっている。欧米を理解する上で、宗教を抜きにすることはできない。そして、インテリジェンス(情報活動)の世界では、アカデミックな世界の充実が必要であることがわかる。日本の情報分析の底の浅さは、アカデミックの貧困と関係があるのかもしれない。日本は、知識を軽視するところがある。一方、ロシアはインテリゲンチャがひとつの階級として隠然たる勢力を持っているらしい。それがわからないと、サハロフがなぜ力を持っているのかもわからない。国際文化論・社会論としても、この本は刺激的で、面白い。