グッドナイト&グッドラック

グッドナイト&グッドラック 豪華版 [DVD]

グッドナイト&グッドラック 豪華版 [DVD]

 マッカーシーと戦った放送ジャーナリスト、エド・マローを描くジョージ・クルーニーの映画。モノクロで、舞台は放送局だけ。マッカーシーは現実のドキュメンタリー映像を使っている。ローコストで、自分が描きたいテーマを、つくりたいようにつくった映画。クルーニーは気合いが入っているし、映画には緊迫感がある。マッカーシズムの恐怖は、ジャーナリストを自殺にまで追いやるものだった。その一方で、デヴィッド・ストラザーン演じるマローの頑なさも描いている。フランク・ランジェラ演じるCBS会長を同情してしまいたくなるところもある。会長は会長で、広告主、系列局、株主、政治家からの圧力の防波堤になり、報道現場を守るのだが、そうした日々を「胃が痛くなる」と愚痴ると、マローからは、そんなことは(ジャーナリズムのトップとして)当たり前だろう、自分たちがテレビを信用できるメディアとしてブランド化しているんだ、と言われてしまう。それはその通りなんだけど、「勘弁してよ」と泣きたくなることもあるだろうな、と思う。最後は番組を縮小してしまうけど、マローがマッカーシズムと戦うことを許容した経営者も経営者で偉かった。でも、あの頑固さがなければ、自らの生命の危険を冒してまで、強大な権力を持った政治家と戦うようなことはできないだろうなあ。
 この映画、メディアの(束の間の?)勝利を描いているんだが、マローの友人のジャーナリストを自殺に追いやるのもメディア。映像で見ても、怪しげな人相の議員の怪しげな発言を増幅し、国中を恐怖に陥れることはメディアがなければ、不可能だった。事実無根の話でも、議員の発言を報じることは「公正な報道」で、独自取材で議員を批判しようとすると、それは「偏向報道」になってしまう。そうした報道が陥りがちな矛盾についても映画では描かれている。単純なジャーナリズムの勝利ではなくて、明暗両方を描くところを見ると、クルーニーは知性的な人だったんだなあ。
・公式サイト
 http://www.goodnight-movie.jp/