ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ「ウィキノミクス」

ウィキノミクス

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 これは面白く、かつ刺激的だった。副題に「マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」。ウィキノミクスは、ウィキペディア的経済ともいえるし、オープンソース型のコラボレーション開発・生産体制ともいえる。いくつか、抜き書きすると…

企業が革新を実現し、差別化し、競争力をもつために必要なのは、一定の物事を適切に実行することであり、具体的には、すぐれた人材を集めること、知的財産をしっかりと守ること、顧客を重視すること、グローバルな視点で考えつつ地域に根ざした行動をすること、執行を上手に行うこと(つまり経営と管理をしっかり行うこと)だった。しかし、この原則の多くは新しいビジネス環境において力不足であるし、まったく不適切となる場合さえもある。ウィキノミクスには四本の柱がある。オープン性とピアリング、共有、グローバルな行動である。この四大原則が、古いビジネス教義を駆逐しつつあるのだ。

 こうした環境をインターネットの世界だけではなく、リアルな経済・企業の世界で集めた豊富な実例を通じて教えてくれる。今年最高のビジネス書になるかも。
 このところ、欧米ではメディアの買収劇が盛んだが、ユーザーが生み出すコンテンツの脅威に既存メディアは対応を迫られているとしたうえで、こんな一説もある。

大書された警告に気づかないメディアは、メディアをよく知り、CNNや「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の権威よりも仲間の眼力を信頼することが多い新世代のプロシューマーに見捨てられるだろう。

 マードックの買収に直面したWSJの現況を考えると、考えるものがある。いずれにせよ、こうしたコラボレーションのプラットホームをどう創り、発展させ、維持するかが重要なポイントとなってくる。