シン・シティ

 フランク・ミラーのグラフィック・ノベル(日本語感覚で言うと「劇画」だろうか)の映画化。その画調をそのまま映像化したようなスタイリッシュなイメージの連続。これだけ濃いと、途中で飽きるかと思ったら、予想に反していい。残酷な描写が多すぎるとは思うものの、映像としては完成されている。白土三平のマンガを映画化しても、こんな感じになるのかも。手や足が飛んでいく。監督は、原作者のフランク・ミラーロバート・ロドリゲス。ロドリゲスって低コストでエンターテインメントを巧みにつくる人という印象だったのだが、これを見ると、映像の造形力はあるんだなあ、と改めて感心。短編が連なっていくような映画で、各エピソードでキャラクターが絡み合う。
 加えて出演陣が超豪華で、ブルース・ウィルス(ハードボイルド)、ミッキー・ローク(メーキャップがすごくて、分からなかった)、クライヴ・オーウェン(好きだなあ)、ベニチオ・デル・トロ(相変わらずクサイ。メーキャップも)、イライジャ・ウッド(怖い役)、マイケル・マドセン(しぶい)、ジョシュ・ハートネット(最初と最後をつなぐ)、マイケル・クラーク・ダンカン(でかい)、ルトガー・ハウアーと、男優陣を思い出して並べただけで、これだけ。女優陣も、ジェシカ・アルバカーラ・グギノ(「スパイ・キッズ」のママ)、ブリタニー・マーフィなど、劇画が原作なので、美女が次々に登場。ミッキー・ロークと一夜をともにするジェイミー・キングなど、その代表例。娼婦街の女王、ロザリオ・ドーソンも良かった。デヴォン青木演じるミホは「キル・ビル」のユマ・サーマンよりも強そう。
 一方、暴力と腐敗の街、シン・シティを見ていると、最近読んだチェチェン戦争のルポを思い出してしまった。映画の中の不条理な暴力は現実世界にもあるんじゃないか。そっちのほうがよほど怖い。