星新一のSF
ショートショートはほとんど読んだけど、この本は読んだことがなかった。実父の
星一の物語。新興企業を創るが、みごと政官財の鉄のトライアングルに押しつぶされる。昭和に書かれた大正の話なのに、平成にも通じるアンチ
ユートピア・モノだった。新興企業の潰し方は今も昔も変わらない。日本は今も昔も
法治国家ではなくて、官治国家。官僚たちが思うがままの「事後チェック」の前に、民間企業は無力。メディアにリークして、社会的信用を失墜させる手法も変わらない。このあたり、本当に日本は変わらない。大正の話とは思えない。加えて、
星一が、官の連続攻撃の前に(最初の段階で)「
行政訴訟を起こしておくべきだった」と悔やむところを読むと、さらに慄然とする。昔も官をチェックする制度そのものはあったのだ。しかし、そうした法律が現実には機能しない。
法治国家ではなくて、官治国家だから。恐ろしいほど、変わらない。
星一の時代から、戦争に負けて、
天皇は象徴になり、陸海軍も、財閥も解体され、戦後も何度も危機がありながら、それでも官僚機構だけは変わらない。すごいなあ。この小説の恐ろしさが変わらないこと自体が恐ろしい。